あの日、青い海に君を置いてきた~「大丈夫」の先で君を失った。だから私は、今日も止める~

4 保健室で


翌日、ヒカルは学校を休んだ。
二日後の朝、ヒカルは保健室にジャージ姿で登校した。
髪をとても短く切っていた。

「アンナ先生」
「ヒカルさん、落ち着くまで保健室登校認められたよ。
こちら、ナオさん」

ナオはベッドの奥の定位置から顔を出した。
ゆるく結んだ髪、メガネ、細くて白い手足。
小さな声で挨拶した。

「ナオです。よろしく」
「ヒカルです、よろしく。何してるの?」
「ああ。今日は一日家庭科の日なの。
編み物している。
あ、もちろん、勉強もするよ。
ちゃんと。気分が乗ったらだけど……」
「そうなんだ」

ヒカルは周囲を見回して、座る場所を探した。

「そこは、けが人が座る椅子だよね。
ソファーは病気の人の場所かな。
アンナ先生、放課後1年の教室から自分の机といすもってきていいですか」
「担任の先生に相談しよう。そして、オッケーが出たら、放課後一緒に運びましょう」



◇◇◇
こうしてヒカルとナオとアンナの保健室ライフが始まった。
ナオは目立たないようにひっそりと過ごしている。
ヒカルは活動的だった。

「手伝うことありますか? アンナ先生」
「じゃあ、水質検査お願い。やり方は……」
「この箱に書いてありますね」

保健室にいるのだから、役に立たなきゃと無理をしているようだ。
「ヒカルさん、いいよ。勉強道具もってきたんでしょ。
自分のためになること、やっていいからね」

休み時間になった。
女子が3人、来室した。

ひとりが言った。
「頭が痛いんです」
「このカードに名前書いてね」
ええっと、鈴木トモエさんね」

体温計で熱を測っている時だった。
頭痛だと訴えているトモエが明るい声で言った。

「うわあ、ヒカルちゃん、男子になったんだね。
びっくり。どうしたの?」

他の子も続けた。
「1年教室で噂になっているよ」
「誰か見て来いってみんな言っている。だから、見に来た」

アンナが低い声を出した。
「頭痛というのは嘘?」
「だって、ヒカルを見なくちゃって思って。友達だから」
「ほんと、髪も短いし、男子に見える」

アンナは腕組みをして怒っている。
「あなたたち、嘘ついてまで、見に来たの?
見世物じゃないし、そういう噂されるとつらいと思う。
友達なら、ヒカルさんの今の気持ちを理解してほしい。
余計なこと言いふらすんじゃないよ。さあ、帰って」

ナオは息をひそめていた。
ヒカルは、黙って下を向いていた。

みんなが帰ってから、ヒカルはぼそっと言った。
「やっぱ、死にたいよ。先生」






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