経営企画部の彼が半年間、彼女に連絡できなかった理由│Quiet Strength×Soft Strength2

今日も仕事はちゃんとやる

 さて、二人で準備を終えて出発しますかと玄関に向かう。一緒に目覚めて朝ご飯食べて同じ会社に出勤。ちょっと照れる。この状況に綾音は、こっそり悶えていたけれど司は気付かない。そして別の思いで部屋を出る直前に綾音に向き合った。

「…綾ちゃん」

「ん?」

 顔を上げた綾音と目が合う。一目見た時からずっと特別な綾音。側にいるだけで癒されて、離れていても自分を支えてくれる。後ろを気にしなくても前を向くことを認めてくれる人。

 その上で、我が儘なのは重々承知している。しているけれど、振り返ったら甘えさせて欲しい。昨日みたいに心を満たしてくれるのも欲しいし、俗物的で目に見えるものも沢山、もっと。

 全部欲しい。

「今日の夜も会えない?」

 綾音の髪に触れて囁いた。昨日は司を包み込むように落ち着いていた綾音は、その言葉にびくっと震える。小動物を追い詰める肉食動物のように司は距離を詰めた。そう。この子はラーテルなのである。持ち球は直球のみ。

「明日も明後日も、ずっと側にいてくれない?」

 …ひぃ…。と、綾音の小さな悲鳴が聞こえてくる。自分に反応して漏れたその声に、満足するどころか煽られる。もう絶対に逃がさないと司が思ったその瞬間に綾音の運命は決まった。

「わ、わか…っ。い、いい、よ。うん。でも、じ、じゃあ、一度帰って、えと、準備、してから、来る、ね…っ」

「駄目。俺が全部用意するから身一つで来て。…いや、選ぶのとかは綾ちゃんがして良いけど、そんな事の為に時間使わないで」

「へ…? え…?」

「お願い。仕事終わったら待ち合わせして、そのままずっと一緒にいよう?」

 催眠術でも掛けるかのように、司は綾音の目を覗き込んで囁いた。躊躇わずに押した綾音はあっさりと落ちる。

「は…はい…」

「ん」

 よしよし。と、素直に言うことを聞いた綾音を褒める様に髪を撫でて司は頷く。

「楽しみにしてるね。綾ちゃん」

 そう言って、そっとキスをした。
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