さようなら、お別れしましょう
31 相談
ジグルズ様は視線を落とし、指に絡んだ私の髪を静かに解いた。
「悪い」
「いえ……。ジグルズ様はお父さんみたいですよね」
「お父さん!?」
「おれも思ってました!」
ハリルは同感とばかりに、うんうんと首を縦に振った。
「ジグルズ様はみんなのお父さん的存在だと思うんです」
「……なるほど」
気のせいでなければ、ジグルズ様が苦笑しているように見えた。
「あっ! お父さんとお母さんだぁ!」
女の子は誰よりも早く、両親を見つけ、明るい表情に変わった。
私の予想通り、町役場の前に女の子の両親と思われる男女が、心配そうな顔をして待っていた。
「ああ! 無事でよかった!」
「ごめんなさい……。運河の船がどこまでいくのか、見たくて……」
女の子はどうやら、船を眺め、追いかけているうちに、迷子になってしまったようだ。
二人は泣きながら、女の子を抱き締めていた。
「あまり叱らないでやってくれ。大人ですら迷う町だ」
「もしや、ベルクヴァイン公爵様でいらっしゃいますか!?」
「ああ」
「こ、光栄です。そっ、そのっ……一度、遠くからでも拝見できたらと思っていました!」
「娘が迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございません……」
必死になって頭を下げる女の子の両親に、ジグルズ様は笑って答えた。
「迷惑をかけているのは、こちらのほうだ。誰もが安全に過ごせる町にしたいと思っている。これに懲りず、また訪れてくれ」