さようなら、お別れしましょう
15 生き延びる手がかり(3)

「あのっ……! この町に滞在したことがある人なら、ジグルズ様はわかりますか?」
「いや、さすがにそこまでは。住んでいる人間ならわかるかもしれないが、滞在者までは把握しきれてない」

 大陸の交易の中心であるシャルク・ホジャでは、人が大勢行き来し、大量の荷物が運ばれる。
 今も私とジグルズ様が会話をしている横で、木箱を山積みにした荷馬車と荷車が通り過ぎていった。
 それをジグルズ様は横目で見ながら言った。

「特に他国の人間が、町に滞在するための手続きが間に合わず、今日のような争いが頻発している状態だ」
「そうですか……」
「改善したいと思っているが、公爵家の人手が足りていない」

 ジグルズ様はいつも領民のことを考えているのか、その視線は人々のほうを向いている。

「それで、ジグルズ様が町の見回りをなさっているのですね」
「人手が足りてないからな。幼いハリルでさえ、貴重な町の見回り要因になるくらいには困っている」 
「えっ!? そ、そんなに……」
「ああ」

 ジグルズ様は困った顔で笑っていた。
 ハリルはどう見ても七歳くらいで、かなり人手不足が深刻なのだとわかる。
 でも、この町に人は大勢いる。
 こんなに人がいて足りないなんて、おかしな話だ。

「人手ですか……。でも、人がこんなにいるのですから、人手が足りないということはないと思います」
「見回りする人間を雇えということか? 見回りをするにしても、誰でもいいというわけではないぞ」
 
 信頼のおける人間だけに、ジグルズ様は町の管理を任せているようだ。
 たしかに信用できない相手を雇うわけにはいかない。
 でも、先ほどの様子からして、町の人々との関係は良好で、心からジグルズ様を慕っている。
 私ならば――

「私なら、ここに住む人々に都市の管理を任せます」
「住人に?」
「はい。 ジグルズ様と町の人々が話す姿を見ていましたが、信頼関係が築けていると感じました。住んでいる方なら、町にも詳しく、よく働いてくれるのではないでしょうか?」
「……自治権か」

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