さようなら、お別れしましょう
20 別居後、初めて会う妻(3) ※イーザック
 
 レフィカと兄上は同時に俺を見た。
 分厚い本をテーブルに置き、真剣な顔をしていた。
 甘い雰囲気とは違い、どこか重々しい。

 ――浮気では……ない……?

 二人の視線に気づき、我に返った。
 しかも、レフィカの目は語っていた。

『なにしにきたの?』

 慌てた自分が恥ずかしい。
 浮気だと言ったのは誰だ!
 ここまで、俺は慌てる必要はなかった。
 レフィカは別居中で、俺が『興味が持てない』と言った妻だ。
 これではまるで、興味があるようではないか。
 そもそも、浮気でレフィカが命を落としたところで、俺に非はない。
 
 ――そうだ。俺は同盟を消滅させないために、急いだだけだ。別にレフィカのことなどなんとも思っていない!

「イーザック、どうした? 今、レフィカと話をしていたところなんだが、なにかあったのか?」
「レフィカ? ずいぶん親しげですね」
「なんだ。別居中の妻が、他の男と話しているのが面白くないのか?」
「違うっ! ……いや、それは兄上の勘違いです」

 レフィカはキョトンとした顔で、俺を見ていた。
 兄上は焦る俺を見て、おかしそうに笑っていた。

「レフィカは俺の配下を助けてくれた。その礼に屋敷に招いただけだ」
「助けた……?」

 レフィカはにっこり微笑み、うなずいた。

「イーザック様。旅行を許可してくださり、ありがとうございます。町を観光していたところ、揉め事に遭遇いたしまして」
「のんきなものだな」
「ええ。のんびり旅行させていただいております」

< 90 / 194 >

この作品をシェア

pagetop