総長の愛が、重すぎる

最終章

年が明けて、街はまだお正月の空気に包まれていた。

吐く息は白く、夜の冷たさは冬のままなのに、どこか新しいはじまりの匂いがする。

ひまりは待ち合わせ場所で、両手をコートの袖に隠しながらそわそわしていた。

今日は蓮と初詣に行く約束をしている。

少しして人混みの向こうから蓮が歩いてくるのが見えた。

目が合った瞬間、ひまりの胸がふわっとあたたかくなる。

「待った?」

「ううん、今来たとこ」

そう答えると、蓮は当然みたいにひまりの手を取った。

冬の夜の中でも、その手はちゃんとあたたかい。

「行くぞ」

「うん」

神社へ向かう道には屋台が並び、にぎやかな声があちこちから聞こえてくる。

でもひまりにとっては、その全部より、隣を歩く蓮の存在のほうがずっと大きかった。

参道をゆっくり進みながら、ひまりは少しだけ顔を上げる。

「こうして新年すぐ会えるの、うれしい」

すると蓮がわずかに目を細めた。

「俺も」

短いけれど、まっすぐな声だった。

人が多くなってきたところで、蓮の手に少し力がこもる。

はぐれないように。

それと同時に、離したくないみたいに。

ひまりはそのぬくもりに、そっと指を絡め返した。

蓮が一瞬だけこちらを見る。

その目が少しやわらいで、ひまりはそれだけで幸せになれた。
< 51 / 54 >

この作品をシェア

pagetop