雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

1-4

「確か、これだったよね」

 エノレアが手に取ったのは、滋養強壮に効く薬草だ。疲れたときに煎じて飲むと元気になれると、ガレスに教えられた。

「ガレスさんの疲れが取れますように!」

 エノレアは瓶からたっぷりと薬草を取り、鍋に投入する。
 そして、その他にもいくつか薬草を入れると、ぐるぐるとかき混ぜたのだった。

  ◇ ◇ ◇

 働いたあとの風呂は最高だ。汗と一緒に、疲れも流れていくような気がする。
 ガレスはさっぱりした気分で、風呂を出た。

 リビングの暖炉の前では、エノレアが暗号解読訓練の続きをしていた。
 窓からは、白い雪に混じって緑色の葉っぱが見える。

「いつの間にか、緑が見え始めたな。もうすぐ冬が終わる。いよいよエノレアの学校も始まるな」
「うん、楽しみ」

 エノレアはノートから顔を上げ、屈託なく笑う。

「そうだ。通学途中で変な奴が出たらぶっ飛ばせるように、今度護身術を教えてやる。学校までは距離があるからな」
「護身術?」
「身を護る技だ」
「やりたい!」

 エノレアはこくこくと頷き、目を輝かせる。

「じゃあ、決まりだな。明日から始めよう。……ところで、風呂出たときから気になってたんだが、なんか変なにおいがしねえか?」

 ガレスは鼻をひくひくとさせる。
 まるでポーション作りをしているときのような癖のある匂いが、部屋全体に漂っていた。

「あ、いけない! お鍋に火をかけたままだった。ご飯、出来てるよ」
< 17 / 102 >

この作品をシェア

pagetop