雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
2.無自覚万能令嬢、王都に行く

2-1

 時は流れ、エノレアは十八歳になっていた。
 この春で学校も卒業し、今はガレスの仕事を手伝いながら過ごしている。

「……あいたたたたた」

 その日、薪を販売単位にまとめる作業をしていたエノレアは、どこからか聞こえてくるうめき声に手を止めた。

「お父さん?」

 小屋の裏手に回ると、そこには腰を押さえて地面に座り込んでいるガレスの姿があった。

 顔をしかめ、額には汗が浮かんでいる。

 普段のガレスは熊に殴られても平然としていそうなのに、今日は見るからに様子がおかしい。

「お父さん、大丈夫? どうしたの!?」

 エノレアは慌ててガレスに駆け寄る。彼の背中に触れると、「いてー!」とガレスが叫んだ。

「え? えっ?」

 尋常でない痛がりように、エノレアは狼狽える。
 一体どうしてしまったのかと、ただ事ではない雰囲気を感じた。

「……木を運んでたらな」

 ガレスは微動だにせず、顔をしかめたまま話す。

「腰がいった」
「腰?」
「これはきっと……噂に聞く、ぎっくり腰だ」
「ぎっくり腰?」
「おう」

 ガレスはいまだに動かない。痛みで動くことができないようだ。
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