雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

3-2

「ロングレイン侯爵?」

 レニオスは訝しげに聞き返す。

「今日の午後、面会の約束をしていたではないですか」
 
 エドガーが答える。

「そうだった。……面倒だな」

 レニオスはチッと舌打ちする。

 ロングレイン侯爵家は、リーヴ国内でも有数の、歴史のある侯爵家だ。そこの当主であるロングレイン侯爵がここのところ頻繁にレニオスを訪問してくる。毎回毎回、年頃の娘も一緒であることを考えると彼らの魂胆は見え見えだった。

「娘を俺の妃にしたいのだろうが……生憎あの女には魅力を感じない」
「そう仰らずに。彼女、社交界では可憐な花として名を馳せているそうですよ」
「可憐な花はすぐに枯れる」

 レニオスは忌々しげに答える。

「とは言っても、ロングレイン侯爵家には借りがありますから。実質的に、彼女は殿下の婚約者も同然です」
「わかっている!」

 レニオスは声を荒らげた。

 そう。レニオスにはロングレイン侯爵家に借りがあった。
 あれはレニオスが十一歳のときのこと。リーヴ国内の有力貴族を集めて、ガーデンパーティーが開催された。表向きはただのお茶会だが、実際はレニオスの将来の側近や伴侶の候補を見出すための品定めの会だ。
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