雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
1-2
(助けないと!)
エノレアは考えるより先に動いていた。
いつも首からぶら下げているロケットを外し、蓋を開けると小さな包み紙を取り出した。亡き母がエノレアに残した「特別な薬」だ。
『本当に困ったときは、これを使いなさい。飲んだ人を、危機から救ってくれるわ』
母はいつも、そう言っていた。
(いまは〝本当に困ったとき〟よね?)
エノレアは震える手で包みを開ける。中に入っていたのは、白い粉薬だ。
「リリアナ、飲んで!」
倒れたリリリアナの上半身を支えて起こし、薬と水を口元に流し込む。
(お願い、お母さん。リリアナを助けて)
そう祈りながら。
そのとき、リリアナに同伴してお茶会に訪れていたロングレイン侯爵家の大夫人の鋭い声が響いた。
「何をしているの!」
エノレアは顔を上げる。
「お薬です。リリアナを助けようと――」
「何言っているの! ああ、どきなさい! リリアナ! しっかりして!」
大夫人は血相を変えてエノレアを突き飛ばすと、リリアナを抱き起こす。
「た、大変よ! うちの孫の意識がないわ! この疫病神に毒を飲まされたに違いないわ」
大夫人は悲鳴を上げる。周囲の空気が凍りついた。
「毒? 毒だと!?」
自慢の子どもたちを連れて参加していた周囲の大人達も一斉にざわめく。
彼らの冷たい視線で、エノレアは初めて自分の状況に気づいた。
彼らはリリアナの口に何かを飲ませた、エノレアを疑っているのだと。
「違います、あれはお母さんが作った薬で――」
「お黙り! この疫病神が!」
大夫人がエノレアをひっぱたく。
エノレアの小さな体は地面に倒れ込んだ。
エノレアは考えるより先に動いていた。
いつも首からぶら下げているロケットを外し、蓋を開けると小さな包み紙を取り出した。亡き母がエノレアに残した「特別な薬」だ。
『本当に困ったときは、これを使いなさい。飲んだ人を、危機から救ってくれるわ』
母はいつも、そう言っていた。
(いまは〝本当に困ったとき〟よね?)
エノレアは震える手で包みを開ける。中に入っていたのは、白い粉薬だ。
「リリアナ、飲んで!」
倒れたリリリアナの上半身を支えて起こし、薬と水を口元に流し込む。
(お願い、お母さん。リリアナを助けて)
そう祈りながら。
そのとき、リリアナに同伴してお茶会に訪れていたロングレイン侯爵家の大夫人の鋭い声が響いた。
「何をしているの!」
エノレアは顔を上げる。
「お薬です。リリアナを助けようと――」
「何言っているの! ああ、どきなさい! リリアナ! しっかりして!」
大夫人は血相を変えてエノレアを突き飛ばすと、リリアナを抱き起こす。
「た、大変よ! うちの孫の意識がないわ! この疫病神に毒を飲まされたに違いないわ」
大夫人は悲鳴を上げる。周囲の空気が凍りついた。
「毒? 毒だと!?」
自慢の子どもたちを連れて参加していた周囲の大人達も一斉にざわめく。
彼らの冷たい視線で、エノレアは初めて自分の状況に気づいた。
彼らはリリアナの口に何かを飲ませた、エノレアを疑っているのだと。
「違います、あれはお母さんが作った薬で――」
「お黙り! この疫病神が!」
大夫人がエノレアをひっぱたく。
エノレアの小さな体は地面に倒れ込んだ。