雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

4-3

「悩みすぎだろう。日が変わってしまいそうだ」

 ケースの前に立ち尽くして悩み続けるエノレアを見て、レニオスは呆れたように言う。

「すみません。味の想像がつかなくて、どれを買えばいいのか迷ってしまって──」
「なら、全部買えばいいだろう?」
「全部⁉ それはさすがにやりすぎかと。普通に仕事しただけなのに、頂きすぎです」

 エノレアは両手のひらをレニオスに向け、謹んで固辞する。
 それを見たレニオスは目を丸くして、くくっと笑った。

「お前は、妙なところで随分と真面目だな」

 胸がドキッとした。楽しげなレニオスから、目が離せない。
 口の端を上げてクールに笑う姿は何度も見たことがあったが、こんなふうに楽しそうに笑う姿を見るのは初めてだったから。

「おい。この場でいくつか試食させてやってくれ」
「かしこまりました」

 レニオスは店員に指示する。店員は、おすすめの品をチョイスして銀のトレーに載せると、それをレニオスとエノレアの前に置いた。
 レニオスはそのひとつを摘まみ上げると、エノレアの口元に差し出す。

「食べてみろ」

 レニオスが差し出したのは、小さなフルーツの形をしたピンク色のお菓子だった。

「え⁉ 自分で食べられます」

 エノレアは顔を赤くして断る。
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