王子様になりたい ~王子様の恋愛指南~

第1話

 日曜日の正午。約束の時刻まで、残り一時間。
 待ち合わせ場所までは少し距離があり、すぐにでも家を出なければならない。
 姿見の前に立ち、身だしなみを頭の先からつま先まで確認する。

「問題はない……はず」

 昨晩、入念にトリートメントを施した黒髪。今日は軽くウェーブをかけてみた。半袖の花柄ワンピースは、最近のトレンドらしい。襟元のレースが顔まわりを華やかに見せてくれる。その下では、金のネックレスがほのかに輝いていた。ベージュのバッグには必要なものを詰め込んだ。
「お淑やかな女性」を意識したコーデ。
 一日かけてSNSで調べたのだ。きっと、何とか様になっているはず。
 祈りを込めてカモミールの香水を吹きかける。
 これで、 完璧だ。

『あなたの王子様になって、恋愛を教えてあげる』
『だから——一日だけ私と付き合ってほしい』

 社内で羨望の眼差しを向けることしかできなかった私に、王子様が手を差し伸べてくれた。

「待っていてください、王子様」

 いつもより高めのパンプスを履けば、自然と背筋が伸びた。
 深く息を吐き、扉を開ける。
 天気は快晴。さんさんと降り注ぐ太陽が、スポットライトのように私を照らした。
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