王子様になりたい ~王子様の恋愛指南~

第10話

 レジには長蛇の列ができており、会計に随分と時間がかかってしまった。
 キーホルダーを二つ、それぞれ透明の小袋に入れてもらい急いで店を出る。

「慎司さん、お待たせしてすみません」

 壁に寄りかかっていた慎司さんへ駆け寄ると、彼もこちらまで近づいてくれた。

「さっきまで私も店内を見ていたから、気にしないで」
「そんなにスターちゃんを気に入ってくれたんですか」

 レジへ向かう直前の反応が少し気になっていたけれど、喜んでもらえてよかった。

「明花に好きになって欲しいと言われたら、ね」

 女性客や子供たちに囲まれながらスターちゃんを見つめる慎司さんを想像すると、思わず頬が緩んだ。
 王子様が可愛いキャラクターを愛でている図は、何とも絵になる。

「では、このキーホルダーは記念品です。お揃いですね」

 私は慎司さんに小袋を渡した。
 彼の手のひらには、はにかみ顔のスターちゃんが収まっている。

「あぁ、大切にするよ」

 スターちゃんをそっと撫でた後、彼は丁寧な所作でバッグにしまった。
 こんな大切に扱ってもらえるとは。私も買ってよかったな。

「……私からのわがままを一つ、いいかな」

 私の手が、慎司さんの手のひらにゆっくりと掬われた。
 その優雅な所作に思わず見とれていると、彼は目を細め、

「今日一日、私と手を繋いでほしい」

 そう囁くと、彼は一本ずつ私の指の間へ自分の指を絡めていった。
 握られた手のひらから感じる、私とは違うしなやかだけど固い指先。
 彼の体温が移ったのか、繋いだ手が徐々に熱くなってくる。

「わ、わかりました。よろしくお願いします」
「ふふっ、ありがとう」

 ここまでされてしまえば、もう断るなんてできないじゃないか。
 そんな恨み言を心の中で呟きながらも、緊張で言葉にはできなかった。

「慎司さん、次はどこに行きますか」

 手から意識を逸らそうと、話題を振ってみる。
 向かう先を考えているのか、慎司さんは少しだけ天井を見上げていた。

「そうだね……よければ私の買い物に付き合ってくれないかな」
「ぜひ」

 こくりと頷けば、彼は私の手を引いた。

「では、一緒に行こうか」

 一体、彼はどんな物が欲しいのだろう。
 次の場所を想像すれば、私の足取りは自然と軽くなった。
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