王子様になりたい ~王子様の恋愛指南~

おまけ:第6話

 入社して三年目。
 加藤先輩に勧められたスターちゃんのイベントまで、あと三日。
 未だ、私は藤島さんを誘えていない。
 日曜日の予定を取り付けるため方法を模索しているからだ。
「デートをしてほしい」と素直に言うべきか。
 いや、彼女は恋愛に疎い節がある。
 直接的な言葉を使えば、この「同期」という関係さえ終わってしまうだろう。
 椅子にもたれかかり、大きく身体を伸ばす。
 そのとき、モニターに一件の通知が表示された。

『今月の営業成績のお知らせ』

 あぁ、今日だったか。通知にカーソルを合わせて、メッセージを開いた。

『一位——齋藤慎司』

 三年も経ってしまえば、特に感じることもない。
 ただ、淡々と結果を受け止めるだけ。

『五位——藤島明花』
「……っ!」

 初めて、心が動いた。心臓がうるさいほどドクドクと跳ねている。

『私も頑張りますから、見ててくださいね』

 藤島さんの努力が、ついに報われた。
 営業成績表には、私と彼女の名前が並んでいる。
 今日ほど、自分の順位を誇らしいと感じたことはない。

「おめでとう、藤島ちゃん!頑張ったね!」
「ありがとうございます、加藤先輩!」

 いつもよりも弾んだ声に、はにかんだ笑顔。
 藤島さんの全身から喜びが溢れている。
 デスクモニター越しに彼女を眺めていた、そのときだった。

「齋藤さん、今日も一緒に飲みに行きませんか!」

 今にも飛び跳ねそうな勢いのまま、藤島さんに誘われた。
 普段の真面目な性格では考えられないほど、感情が前面に現れている。
 彼女の新しい一面を見られたことに、私も舞い上がってしまいそうだ。

「あぁ、もちろん」

 こちらとしても、願ってもない展開だ。
 今日の飲み会で、私たちの関係は変わる。
 その時が待ち遠しかった。
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