① 憑き物落とし~『怨炎繋系』~

『想い』

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 富山に向かう道中。

 連日の疲れからか、夕浬は助手席で寝息を立てていた。あと数時間で夕浬の故郷に到着する。今は少しでも体を休めてほしい。

 俺はパーキングエリアで車を止めると外の自販機でコーヒーを2つ買う。無糖のコーヒーを、後部座席に手渡した。


「……僕は甘いのが好きなんですが」

「悪いな、俺は断然無糖派でね」


 そう言いながら気分転換にと、車を出て2人、空を見上げる。


「……なぁ、灰川さん、あんたどうしてこの業界に入ろうと思ったんだ?」

「……なんですか急に」

「いや、あんたには特別な力はないんだろ。なら普通はこんな仕事しようとしないだろ」

「最初から望んでいたわけじゃないですけどね。ただ、どうしても、この世から掃いたい存在があるんです。……他の全てを懸けてでも、やらなければならない」


気のせいか、そう語る声にはこれまでの飄々としたものとは違う、体温がこもっていた。コーヒーを啜りながら、続ける。


「そのために日々理論を研究しては現場で実践する。それがこうして仕事になってるだけです。まだまだ未完成で、道半ばです」

「深くは聞かないけど、そこまでの探求心がある時点で、やはりあんたの天職なのかもしれないな」

「……奴らを相手にするには、『異質』になるのが一番手っ取り早く、確実だ。たまたま僕はうってつけの『異質者』、要は変態だったってだけですよ」

「よくわからないが、じゃあ『異質』ってのになれば俺にも対抗できるのか? 夕浬を狙う黒い女の霊に」

「なろうと思ってなれれば、苦労しないですよ」

「……なにか、こんな車の運転以外にも力になりたいんだよ!俺は。なんでもいい、やれることがあるなら教えてくれ」

静かな駐車場の中で、コーヒーをすする音と駆け足気味の鼓動だけが聞こえていた。やがて、俺からの目線を切ると暗い空に顔を向けながら話し出す。

「奴らにとっての異質な者とは、常に向きあおうとするもの。『全て』を知ろうとするもの。真相の探求者です。この異質は僕のような感覚の壊れた変人の資質です。恐らくは多くの障害――例えば喜怒哀楽の感情からくる拒絶反応から普通の人間は持ち合わせていないものです」


「まぁ、たしかに俺は灰川さんのように自分から進んで赤の他人の心霊問題に突っ込もうとはしないしな……」


「しかし、どんな人間にも個性がある限り『異質』を内包しているものです。それが発現するのは瞬間的に、爆発的に、その時だけの限定的なものですが」


「それって例えばどういうものなんだ?」


「例を挙げるなら『突発的な殺人衝動』や『異常性癖の開放』ですかね」


「聞いた俺が馬鹿だった」


「冗談ですよ。岡田さんに当てはめるならきっと『自己犠牲』ですか。無論、程度によりますが」


「自己犠牲って、俺にはあんたのがよっぽどそう見えるけどな」


「対抗しうるかどうか、というのはその霊の本質。『存在理由』に起因します。岡田さんの強い感情や行動が、今回の相手にとっての『異質』に当てはまるのなら、自然と事象が導くはずです」


 目には目を歯には歯を。
 魂には魂でしか、干渉することはできないってことか……。



「…………そういうものなのか」


「……コーヒー、ごちそうさまでした」



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