① 憑き物落とし~『怨炎繋系』~
『愛憎表裏』
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僕は取り出した『媒体』を握りつぶした。
「アア嗚呼アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああ」
もう、人と呼ぶのことのできないモノへと成り果ててしまった『塊』が、肉片をまき散らしながらこの場離れようともがく。
醜く、節足動物のように手足を動かしながら、苦悶の表情を浮かべている。
「…… 彼女は、生まれてまもなく焼死しました。しかし、母体と繋がっていた為、『生きたい』という渇望が彼女をまだ息のあったあなたの中に入り込ませた。その時、彼女は母の体を通り、臍の緒を通り、死を前にした苦痛や悲しみといった負の感情に当てられてしまった。これがこの事件の発端です」
「……私は、それじゃあ、自分の『姉』にずっと命を付け狙われていたというの……?」
「……僕達の常識は通じませんがね。なにせ、『それ』は瑞町さんの自我が芽生えるよりも更に以前からあなたに寄生し、あなたと同様に成長してきたのです。ずっと、あなたの『負』の感情を肩代わりしながら」
最初に想像を絶する母の焼死という心の痛みを。
そして、瑞町が幼い頃からずっと抱え込んでいた心の傷を――。
この化物はその身に取り込みながら膨張していったのだろう。
……でも、その行為そのものは……。
「……この『負』を取り込むという行為は、生来の霊媒体質で、悪霊や不幸を招きやすいあなたを、本能的に守るために彼女がしたことだと、僕は考えています。そして、母、箕輪さんの今際の怨念を取り込んだことも、死後悪しきものに変えないために」
「じゃあ……この『姉』は私はたちのために、犠牲になっただけ……?」
「気の遠くなる時の中で、あなたの『負』を吸収し守ってきた彼女は、ある日、もう自分は必要ない存在だと気づく。あなたに婚約者や親友ができ、家族から離れ幸せな日常を送り始めた。その時『存在理由』を失った彼女が器から飛び出した。これまで溜め込んだ『穢れの塊』となって……」
これが彼女に関する記憶が抜け落ちていた理由だろう。
推測が、やがて事実を紡ぎだし、多くの因果が、今、現在を織り成している。
僕にできることは存在理由を理解し、それを対象から『掃う』こと で解決するということ。
今回のケースで僕のやり方が途中まで通じなかったのは、この化物が『存在理由を奪われたがために現れた』例外中の例外であるからなのだ。
「自我を失い負の本能しかもっていない彼女は『存在理由』取り戻すために、瑞町さんに憑き纏い、周囲の人物にも殺意を向けていく。これが今回の事件の全貌です」