人生は虹色
音楽に想いをのせて
第一章
-音楽に想いをのせて-
*
いつしか空は薄暗くなっていき、街灯や街中の光が溢れ始めていく。
我が家に着くと、家の中は明るく、賑わう声が聞こえてきた。
「あっ!仁くん、おかえり〜」
僕は勝手口からドアを開けると航兄ちゃんの奥さん、琴美《ことみ》姉ちゃんに出迎えられた。
「ただいま」
僕は普段、家族間ではしない挨拶を琴美姉ちゃんにだけ済ませると、中の様子を横目で確認する。
まず最初に目に入ってきた情報は、キッチンで琴美姉ちゃんとご飯を作る母さんたち、次に晩酌を楽しむ父さんと航兄ちゃんだった。
だが、これだけじゃまだ終わらない。
何やらキャッキャキャッキャと賑やかに亨兄ちゃんと戯れる航兄ちゃんの子ども達が三人。
珍しいなぁ。
家族全員が集つまることなんて滅多になく、
今日は何かイベント的なことでもあるに違いないと、
この時、僕は察した。
さて、何の祝い事だ?
そう勘ぐるようにして、僕はソファに腰を下ろすと、冷蔵庫の上でSOSを出す茶々と目が合った。
茶々、お前の気持ちは十分、いや十二分に分かるぞ。
僕たちはアイコンタクトでお互いの健闘を祈り合った。
航兄ちゃんは僕が小学生の時に子どもを授かり、琴美姉ちゃんと結婚している。
今では三人の男の子に恵まれ、家庭は賑やかすぎるぐらいだった。
長男の燈也《とうや》は小学一年生で今、亨兄ちゃんの眼鏡を持って走り回っている。
とても元気な性格で人見知りもなく、何でも興味を持てる特攻隊長的なポジションで皆んなをいつも明るくしてくれていた。
次男の奏也《そうや》は幼稚園年長で来年は小学校。
亨兄ちゃんの隣でじっと座り、周りをキョロキョロ不思議そうに眺めている。
ゆったりと穏やかな性格で手を焼くことはないが、口をポカンと開けたまま、人間観察をするこの子は正直まだ謎が多い。
三男の洸也《こうや》は二歳で、一番上の燈也の真似ばかりするわんぱくボーイ。
慣れない家中を横に揺らしながら、燈也を追いかけ回している。
追いかけ回すだけならいんだけど、毎度いつものごとく足がもつれ、顔を強打する始末。
もう泣き喚く光景を何度見たことか。
いつもとは違う日常に少しだけ戸惑いながら、楽しく賑わう家族を僕はただ見守ることしかできなかった。