【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

1.

「これはあくまでわたくしの考えなのだけど……」


 と、お茶会の主であるエズメが話を切り出す。その瞬間、会場にピリリとした緊張感が漂った。


(今日はなにをおっしゃる気だろう)


 アメリーがゴクリと息をのむ。ドキドキと鳴り響く心臓。エズメ以外のみんなが目配せをしつつ、何食わぬ雰囲気を装っている。


「白や銀のドレスばかり着ている女性って、見ていて恥ずかしい気持ちになりません? ご自分の年齢をわかっていないというか、純情ぶってるというか。『自分はいい子です』ってアピールをされているような気がして、なんだかむず痒くなりますの。似たような服ばかりじゃ貧乏くさい感じもしますし」

(今日は服装の話か……)


 ホッとするやら傷つくやら、アメリーは自分の服装を見下ろしつつ、心の中で小さく息をつく。


「そ……そうかしら? 自分が好きなものをしっかりとお持ちの女性って素敵じゃありませんか?」


 そう返事をしたのは出席者のひとりであるフルール侯爵令嬢だ。エズメのトゲトゲした口調に対し、至極柔らかい口調に笑顔。けれど、エズメはため息混じりに呆れ顔を浮かべた。


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