【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

4.(END)

(緊張するなぁ)


 アメリーは鏡にうつった自分を見つめながら、大きく深呼吸をする。

 彼女が着ているのはトレードマークの白色――ではあるのだが、刺繍やリボン、レースにこれでもかというほど紫色があしらわれたツートーンカラーのドレスだ。ネックレスやイヤリングも、サファイアとダイヤの二色ですっきりとまとめられており、上品で華やかな印象を受ける。

 今着ているものはすべて、セヴランからの贈り物だ。紫は彼の瞳と同じ色。パートナーだからと準備をしてくれたのだ。


(本当にいいのかな?)


 自分ではセヴランに不釣り合いじゃないか? ……そんな不安は当然ある。それでも『アメリーがいい』と言ってくれた彼の気持ちにこたえたい。


(だけど、エズメ様はなんておっしゃるかしら)


 最後のやりとりがやりとりだ。ものすごく激怒される可能性はある。


『当日……楽しみにしてるから』


 それでも、悲しいかな。好きな人からの一言には抗えない。
 よし、と覚悟を決めて、アメリーはエズメの屋敷に向かう馬車へと飛び乗った。



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