【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

2.

 アンベール様の行動は早かった。その日のうちにお父様に手紙を送り、翌日には二人でタウンハウスに面会に行くことになった。


「恋人? グラシアン侯爵令息がラナの?」

「ええ。これまで言い出せずに申し訳ございません」


 アンベール様はそう言って深々とお父様に頭を下げる。
 交際をはじめた時期なんかは事前に打ち合わせをしたものの、正直言って不安だ。私は二人のことをおそるおそる見守る。


「……いや、娘から貴方と成績争いをしていることは聞いていましたが」

「二人で勉強する機会も多く、切磋琢磨しているうちに自然に惹かれ合いまして。ラナ嬢からファビアン公爵との結婚の話を聞いて居ても立ってもいられなくなり、こうしてお屋敷まで押しかけてしまいました」


 アンベール様はそう言って私の手をギュッと握る。仲がよく見えるためのお芝居だってわかっているのに、心臓がドキッと大きく鳴り響いた。


「そうでしたか……いや、しかし……」

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