【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
4.(END)
「君は?」
「彼女の恋人、アンベール・グラシアンと申します」
「ああ、君が噂の。だけど、俺は今、婚約者との会話の最中なんだ。勝手に割り入らないでほしいね」
嘲るように笑いながら、ファビアン公爵はアンベール様にくってかかる。アンベール様は小さく首を横に振った。
「いいえ、あなたとラナの婚約については、伯爵が『撤回する』と約束してくれましたよ」
「なに?」
ファビアン公爵が目を見開く。私だってなにも事情を聞いていない。どういうこと? って尋ねたら、アンベール様は一枚の封筒を懐から取り出した。
「詳細な身辺調査の結果、あなたには愛人が何人もいること、爵位を継いで以降領地経営が上手くいっておらず借金を抱えていることが判明したそうで……婚約を白紙に戻すと手紙が届いたんです。おそらくは貴方のもとにも、これと同じ内容の手紙が届いているはずですよ」
アンベール様が見せてくれた手紙はたしかにお父様の筆跡だ。封印からもそれは明らかで。ファビアン公爵はワナワナと唇を震わせた。
「彼女の恋人、アンベール・グラシアンと申します」
「ああ、君が噂の。だけど、俺は今、婚約者との会話の最中なんだ。勝手に割り入らないでほしいね」
嘲るように笑いながら、ファビアン公爵はアンベール様にくってかかる。アンベール様は小さく首を横に振った。
「いいえ、あなたとラナの婚約については、伯爵が『撤回する』と約束してくれましたよ」
「なに?」
ファビアン公爵が目を見開く。私だってなにも事情を聞いていない。どういうこと? って尋ねたら、アンベール様は一枚の封筒を懐から取り出した。
「詳細な身辺調査の結果、あなたには愛人が何人もいること、爵位を継いで以降領地経営が上手くいっておらず借金を抱えていることが判明したそうで……婚約を白紙に戻すと手紙が届いたんです。おそらくは貴方のもとにも、これと同じ内容の手紙が届いているはずですよ」
アンベール様が見せてくれた手紙はたしかにお父様の筆跡だ。封印からもそれは明らかで。ファビアン公爵はワナワナと唇を震わせた。