【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
3.(END)
(詰んだ……)
天井を仰ぎつつ、わたしはひとりため息をつく。
あれ以降もわたしはアイラとブレディン様、それぞれにアプローチを続けていた。けれど、二人の返答は変わらない。わたしとの結婚は避けられないという話だった。偽装結婚を持ちかけるような雰囲気でもないし、正直言って参ってしまう。
「お嬢様、そろそろブレディン様のお屋敷に参りませんと」
「……ああ、そうだったわね」
今日はブレディン様のお屋敷に行くことになっている。あちらに行くのは今日がはじめてだ。
(せっかくの聖地巡礼なのにな……)
残念ながらまったくもって気乗りしない。
むしろ、見れば見るほど悲しくなってしまいそうだ。二人がここで幸せに過ごしていたのにな、って。
「ほら、そんな顔をなさらないで。せっかくの愛らしいお顔が台無しですよ?」
「そんなこと言ってくれるのはアンセルぐらいよ? ……だけど、お世辞でも嬉しい。ありがとう」
「いいえ、心からの本心ですよ」
アンセルはそう言って恭しくわたしの手を握る。胸がキュンと跳ねた。
天井を仰ぎつつ、わたしはひとりため息をつく。
あれ以降もわたしはアイラとブレディン様、それぞれにアプローチを続けていた。けれど、二人の返答は変わらない。わたしとの結婚は避けられないという話だった。偽装結婚を持ちかけるような雰囲気でもないし、正直言って参ってしまう。
「お嬢様、そろそろブレディン様のお屋敷に参りませんと」
「……ああ、そうだったわね」
今日はブレディン様のお屋敷に行くことになっている。あちらに行くのは今日がはじめてだ。
(せっかくの聖地巡礼なのにな……)
残念ながらまったくもって気乗りしない。
むしろ、見れば見るほど悲しくなってしまいそうだ。二人がここで幸せに過ごしていたのにな、って。
「ほら、そんな顔をなさらないで。せっかくの愛らしいお顔が台無しですよ?」
「そんなこと言ってくれるのはアンセルぐらいよ? ……だけど、お世辞でも嬉しい。ありがとう」
「いいえ、心からの本心ですよ」
アンセルはそう言って恭しくわたしの手を握る。胸がキュンと跳ねた。