【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

1.

「なんだ……帰ってきたのか」


 ため息を一つ、男性がじろりとリゼットを見る。金色の髪に青い瞳の人形のような顔立ちに、シーツからは傷一つない白い肌と薄い胸がのぞく。彼の傍らには美しい女性が侍っていて、クスリと笑みを漏らしながらリゼットのことを見つめていた。


「それで? 魔物の討伐と土地の浄化は? 当然成功したんだろうな?」

「――はい。しかし、騎士団の団員が負傷を……」

「ハハッ……成功したならそれでいい。おまえが失敗すれば僕の名誉に傷がつく」


 リゼットの言葉を遮り、男は笑い声を上げる。それからベッドサイドに置いてある新聞を手に取り、その一面を誇らしげに掲げてみせた。


「『第二王子ルロワと彼直属の聖騎士団により、我が国の魔物は劇的に減少している。土地の浄化が進むことで居住可能な地域も増えており、その功績に注目が集まっている』――ああ、実にいい気分だ。明日の朝刊の一面はまた僕が飾ることになるだろう。……兄さんの悔しそうな表情が目に浮かぶようだ」


 ルロワはそう言って頬を染め、嬉しそうに目を細める。その醜悪な顔つきに、リゼットは思わず眉をひそめた。


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