【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

3.(END)

「リゼット、おまえはもう用済みだ。今すぐ城から出ていけ」

「……え?」


 転機が訪れたのは、夜会から間もなくのことだった。


「それは、どうして……?」

「兄さんにかわり、僕が王太子になることが決まったんだ!」

「え?」


 あまりのことにリゼットは驚く。
 ルロワの兄が立太子したのは十年以上前のことだ。今更覆るような話ではないだろうに。


「この八年間の僕の功績が認められた。すでに国土のほとんどについて浄化が終わり、魔獣の脅威も著しくなくなっている。僕がいる限り、この国は安泰だと、そう判断されたんだ」

「それは……だけど!」


 魔獣を討伐したのは聖騎士団だ。その間、ルロワは指揮官とは名ばかりで、安全なところで休んでいた。土地を浄化したのだってリゼットだし、ルロワがしたことといえば、家臣や記者を買収して己の手柄を演出することだけである。


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