影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~

第十部 愛を取り戻す

しばらくして、黒瀬家から正式な招待を受けた。

誠一郎さんと連れ立って、私は再び、あの門をくぐる。

玄関にはお母様が立っていた。

「事情は聞きました。」

「はい……」

「誠一郎さんが、毎日のようにあなたの元へ通っていることも。軍三郎さんからの忠告も。」

――軍三郎さん。何を言ったのだろう。

そのまま案内されて奥の座敷へ通されると、そこには梨子と父の姿があった。

「なっ!なぜ、梨沙がここに!?」

梨子が鋭い声を上げる。私は一瞬身を引きそうになったが、誠一郎さんがそっと私の背に手を添えた。

「お父様……」

私の声に、父はわずかに眉を動かした。

「何しに来た。おまえはこの家から去ったはずだ。」

父の鋭い声が響く。

「そうよ!」

梨子も負けじと立ち上がった。

「今日は黒瀬家と高嶋家の“正式な婚儀の話”なのよ!どうしてあんたがここに現れるの!?」

――そんな日に私が来てどうなるの?
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