帝の唯一の女〜巫女は更衣となり、愛に囚われる〜

第3章 溺愛 ― 恋のはじまり

そして二年後——。

成人の儀を迎えられた暁宮様は、正式に皇太子となられることが決まった。

「いやあ、これで暁宮様のお立場も盤石になるというもの。」

朗らかに笑ったのは、母君の父にあたる藤原国光卿。

暁宮様の外祖父であり、左大臣の座に就く重鎮である。

「これで藤原の家も、ますます栄える。まことに慶ばしいことよ。」

その目は、孫の晴れ姿だけではなく、藤原の一門がさらに宮中で力を握る未来を見据えていた。

実際、暁宮様がご誕生になった折、国光卿は左大臣の位に登りつめた。

そして今度は、皇太子就任によってその地位を盤石のものとしようとしているのだ。

「今度の成人の儀——まことに頼もしきことよ。」

低く響く笑いは、広間の柱に反響し、やがてゆるやかに止んだ。
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