明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛

第1章 契約の花嫁 ― 罪から始まる恋 ―

昔栄華を極めた家でも、その当主が亡くなれば没落するというのは、よくある話だった。

名家である私たちの家、白河家も父が生きていた時には、栄華を誇っていた。

私は女学校を出た後、看護の勉強をさせて貰っていたし、弟の誠一は師範学校にも通わせて貰っていた。

何もかも自由で、やりたいことをさせて貰っていた。

だがそれは、父が亡くなるまでの事だった。

「悪いね、珠緒。あなたばかり働かせてしまって。」

父がいなくなり、学費も出せなくなった今、看護学校も辞めてしまった。

ただ弟の誠一だけは、師範学校に行かせてやりたくて、私はこうして奉公に出ていた。

「姉君。今日もお疲れ様でした。」

弟の誠一は、最近やたら私を姉君と呼ぶ。

自分の学費を稼いでくれている事への感謝なのだろうか。

「今、夕食を作りますからね。」

母は病で倒れ、動けるのは私だけだった。

生きる為には、頑張るしかなかった。
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