明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛

第2章 儚き幸福 ― 秘めた恋と新しい命 ―

翌朝、目が覚めると旦那様は横にいなかった。

「私、そんなに眠っていたかしら。」

起き上がると、ドアがトントンとノックされた。

「はい。」

ドアを開いて入って来たのは、年上の女性だった。

「初めまして。惇の姉の、綾子よ。」

「お姉様！」

私は大きく頭を下げた。

「珠緒と言います。以後お見知りおきを。」

挨拶すると、綾子さんは椅子に座った。

「この時間まで眠っていたのを見ると、初夜は上手くいったみたいね。」

「あ……」

そんな事言われると恥ずかしくて、何も言えなかった。

「いいのよ。私も嫁いだ時あってね。でも初夜で失敗しちゃって、それ以来旦那様は私を遠ざけるようになったわ。」

「そうなんですか。」

初対面の私にそんな話をするお姉様は、悪い人ではないと思った。

「惇も、せっかく来てくれるのに初夜で失敗したくないなって言ってたから、安心したわ。」