明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛

第3章 涙と追放 ― 禁じられた愛のゆくえ ―

そしてお腹も大きく膨れてきて頃。

私は毎日、お腹を摩りながら幸せな毎日を過ごしていた。

「君は男子かな、女子かな。」

そんな事を話しかけながら、その日も階段を降りていた時だ。

踊り場を歩き、1階への階段を一歩下がった時だった。

誰かに押された気がした。

「えっ……」

そのまま体は階段に打ち付けられ、ゴロっゴロっと転がって行く。

まるでスローモーションのように、私の体は階段を転がり、最後に床に大きく打ち付けられた。

「誰っ……?」

私が階段の踊り場を見た時には、誰もいなかった。

ふと足元を見ると、赤い血が流れていた。

「誰か……誰かっ!」

人を呼ぼうにも、声が出ない。

そうした中で、私はお腹に痛みを感じた。

「ううっ……うわあああ!」

その声を聞いたのか、誰かが走って来た。

「珠緒さん!」

お姉様が私を抱き起した。

「どうした!何があったの?」
< 31 / 60 >

この作品をシェア

pagetop