明治、契約の夜に咲く恋─御曹司の溺れるほどの愛

第4章 真実の妻 ― 愛の咲く春 ―

水森先生の看護助手になって、3か月の月日が流れた。

「先生、次の患者さんです。」

「はい、カルテよこして。」

私は念願だった白衣を着て、仕事に当たっている。

何もかもが、夢の世界のように流れて行った。

そんな時だった。

「そろそろ、水森先生も結婚しなきゃな。」

お春さんが言った。

「またその話ですか。」

「心配せんでも、そこに若い娘がいるじゃろ。」

お春さんは、杖で私を差した。

はははと私は、受け流すだけだった。

「白河さんは、結婚しないの?」

水森先生に言われ、思い出したのは旦那様の事だった。

「私はまだ、好きな人が……」

すると夕焼けの診察室の中、水森先生が後ろから私を抱きしめた。

「先生、人が見ています。」

「お春さんならもういないよ。」

私はぎょっとした。本当だ。もういない。

「君の……一途な気持ちを見て、諦めようと思ったけれど、それもできないみたいだ。」
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