45歳、妊娠しました
最終話 新しい家族の形
生後三ヶ月を迎えた蓮は、日に日に表情が豊かになり、声を上げて笑うようになった。
朝、美香が抱き上げると、小さな手を伸ばして彼女の頬に触れる。その瞬間、夜中の授乳や疲れが一気に吹き飛ぶように思えた。
結衣は大学受験を終え、結果を待ちながらも少し肩の力を抜いた様子で、弟の世話を積極的に手伝っている。ミルクをあげながら、
「蓮くんが大学生になる頃には、私何歳になってるんだろう」
と笑い、美香や健一を驚かせることもあった。
健一は仕事の合間をぬって育児に参加する「現代的な父親」へと変わりつつあった。休日には蓮を抱いて散歩に出かけ、道端で出会った人に「可愛いですね」と声をかけられては、まるで自分のことのように誇らしげな顔を見せる。
そして美香。
課長として職場を率いる責任は変わらないが、週の数日はリモート勤務を取り入れ、家族と過ごす時間を増やすことに成功していた。
「もっと早くこういう働き方を選べばよかったのかもしれない。でも、この年齢になって気づけたからこそ、大切にできることもある」
蓮の寝顔を見つめながら、そう思った。
45歳での妊娠、出産は決して楽な道のりではなかった。
迷い、涙し、何度も不安に押しつぶされそうになった。
けれど、夫と娘の支え、新しい命の力強さが、美香に「家族の絆」という答えを教えてくれた。
リビングには、蓮の笑い声と結衣の受験勉強の鉛筆の音、そして健一が淹れるコーヒーの香りが満ちている。
──これが、私たちの新しい日常。
美香は静かに目を閉じ、幸せをかみしめた。
人生のステージは変わっていく。だが、家族で支え合いながら進む未来には、きっと何よりも強い光が待っている。
朝、美香が抱き上げると、小さな手を伸ばして彼女の頬に触れる。その瞬間、夜中の授乳や疲れが一気に吹き飛ぶように思えた。
結衣は大学受験を終え、結果を待ちながらも少し肩の力を抜いた様子で、弟の世話を積極的に手伝っている。ミルクをあげながら、
「蓮くんが大学生になる頃には、私何歳になってるんだろう」
と笑い、美香や健一を驚かせることもあった。
健一は仕事の合間をぬって育児に参加する「現代的な父親」へと変わりつつあった。休日には蓮を抱いて散歩に出かけ、道端で出会った人に「可愛いですね」と声をかけられては、まるで自分のことのように誇らしげな顔を見せる。
そして美香。
課長として職場を率いる責任は変わらないが、週の数日はリモート勤務を取り入れ、家族と過ごす時間を増やすことに成功していた。
「もっと早くこういう働き方を選べばよかったのかもしれない。でも、この年齢になって気づけたからこそ、大切にできることもある」
蓮の寝顔を見つめながら、そう思った。
45歳での妊娠、出産は決して楽な道のりではなかった。
迷い、涙し、何度も不安に押しつぶされそうになった。
けれど、夫と娘の支え、新しい命の力強さが、美香に「家族の絆」という答えを教えてくれた。
リビングには、蓮の笑い声と結衣の受験勉強の鉛筆の音、そして健一が淹れるコーヒーの香りが満ちている。
──これが、私たちの新しい日常。
美香は静かに目を閉じ、幸せをかみしめた。
人生のステージは変わっていく。だが、家族で支え合いながら進む未来には、きっと何よりも強い光が待っている。


