想いと共に花と散る
降伏の時
ほんの少しだけ先を進む土方の背中を追いかけながら、雪は見慣れた町並みを歩いていた。
二人が向かうは、かつて新撰組として過ごしていた仲間が待つ屯所。
「……只今戻った」
「副長!?」
埃っぽくなったその場所は、記憶の中の姿と何一つ変わっていない。
ただ、少しだけ広くなった気がした。人が減ったせいで、それがより強調されている。
鳥羽伏見の戦いの後、京に残った新選組隊士と大阪で療養していた隊士がこの場に集った。
「副長。お久しぶりです」
「おう。変わりねぇようだな、斎藤」
見知った顔があるというのは、それだけで安心できるものがある。
土方の後ろでそわそわと落ち着かない様子の雪を見た斎藤は、小さく笑みを落とした。
束の間の穏やかな時間。変わってしまったのに、どうしてか心は落ち着いている。
集まった隊士達一人一人に声を掛けて周り、小部屋に戻った頃にはすでに日が落ち始めていた。
「ただいま、土方さん」
「……随分と時間掛かったな」
「ちょっと長話しちゃって」
この部屋は、かつて新選組副長が使用していた一人部屋。その隣には雪が使っていた部屋があったが、今夜は同じ部屋で夜を過ごそうと思っていた。
「さっき話してきた人達の中に、近藤さんが斬首されたことを……知らない人がいました」
「情報にはどうしても時差が生まれる。どうせ、時間の問題だったことだ」
「それって、すごく悲しいことじゃないですか? だって、ずっと慕っていた人が自分の知らない所で死んじゃうんだから」
当たり前に隣りにいると思っていた人が、自分の目の届かない所で死んでしまって、後になってそれを知らされることの悲しみを雪は痛いほど知っていた。
そうやって、今までに何人も失ってきたのだ。
局中法度に背き切腹した山南。御陵衛士に入り粛清された藤堂。鳥羽伏見の戦いによって戦死した井上と山崎。それ以外に、別れてしまった永倉と原田。
皆、雪の知らない所でいなくなった。最後に言葉を掛けることもできないままに、永遠の別れとなったのだ。
「ねぇ、土方さん」
「何だ」
「土方さんはそんなことしないでくださいね」
「……どんなことだよ」
元々の白い肌が薄暗い部屋では余計に白く見えた。
肩に掛かる長い黒髪がその肌でよく映えていて、思わず見惚れてしまいそうな美しさを醸し出す。
二人が向かうは、かつて新撰組として過ごしていた仲間が待つ屯所。
「……只今戻った」
「副長!?」
埃っぽくなったその場所は、記憶の中の姿と何一つ変わっていない。
ただ、少しだけ広くなった気がした。人が減ったせいで、それがより強調されている。
鳥羽伏見の戦いの後、京に残った新選組隊士と大阪で療養していた隊士がこの場に集った。
「副長。お久しぶりです」
「おう。変わりねぇようだな、斎藤」
見知った顔があるというのは、それだけで安心できるものがある。
土方の後ろでそわそわと落ち着かない様子の雪を見た斎藤は、小さく笑みを落とした。
束の間の穏やかな時間。変わってしまったのに、どうしてか心は落ち着いている。
集まった隊士達一人一人に声を掛けて周り、小部屋に戻った頃にはすでに日が落ち始めていた。
「ただいま、土方さん」
「……随分と時間掛かったな」
「ちょっと長話しちゃって」
この部屋は、かつて新選組副長が使用していた一人部屋。その隣には雪が使っていた部屋があったが、今夜は同じ部屋で夜を過ごそうと思っていた。
「さっき話してきた人達の中に、近藤さんが斬首されたことを……知らない人がいました」
「情報にはどうしても時差が生まれる。どうせ、時間の問題だったことだ」
「それって、すごく悲しいことじゃないですか? だって、ずっと慕っていた人が自分の知らない所で死んじゃうんだから」
当たり前に隣りにいると思っていた人が、自分の目の届かない所で死んでしまって、後になってそれを知らされることの悲しみを雪は痛いほど知っていた。
そうやって、今までに何人も失ってきたのだ。
局中法度に背き切腹した山南。御陵衛士に入り粛清された藤堂。鳥羽伏見の戦いによって戦死した井上と山崎。それ以外に、別れてしまった永倉と原田。
皆、雪の知らない所でいなくなった。最後に言葉を掛けることもできないままに、永遠の別れとなったのだ。
「ねぇ、土方さん」
「何だ」
「土方さんはそんなことしないでくださいね」
「……どんなことだよ」
元々の白い肌が薄暗い部屋では余計に白く見えた。
肩に掛かる長い黒髪がその肌でよく映えていて、思わず見惚れてしまいそうな美しさを醸し出す。