隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません

54 騎士の矜持

 少し長めの金髪をサラリと風に靡かせながら、アレクはやや細めの瞳をガイズへ向ける。ヘラリ、と笑うその顔は、第一王子と思えないほど悪そうな顔をしていた。

「どうしてレインダムの第一王子であるあなたがこちらに?一体何をしてらっしゃるのですか」

(側近もつけずに、気配を隠してまでここにいるのはどういうことだ?)

 レインダムの第一王子アレクについて、いい話を聞いたことがない。ポリウスとレインダムが争っていた頃から、第一王子だけはポリウスに対して好戦的だったと聞く。身勝手で傲慢、第一王子だからと好き放題で、国王でさえも手を焼いていたという。
 そんな第一王子が、元ポリウスの王城内になぜかいる。ガイズは剣から手を離すが、警戒心は解かずにアレクへ問いかけた。

「ああ、君を探していたんだよ、ガイズ。元ポリウスの騎士団長である君と、ゆっくり話がしたいんだ。……今後のポリウスについてね」

 アレクはガイズの耳元に顔を寄せ、小声で囁く。その言葉に、ガイズは両目を見開いた。

「ここではなんだ、どこか落ち着いて話ができる場所に案内してくれないか?他の誰かに聞かれてはまずい話なんだよ。ほら、俺は武器を何も持っていない。そもそも騎士団長である君に何かできるとは思っていないし……むしろ、君が俺と二人きりでいるところを誰かに見られるのはまずいんじゃないのか?君は元ポリウスの騎士団長で俺は元敵国の第一王子だ。君が俺を殺そうとした、とでも俺が言ってしまえば、君は騎士団長として、いや、騎士として危うくなる。ここにいることもできなくなるだろうな」

 ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべたアレクに、ガイズは眉を顰める。この男は一体何が目的なのだろうか。元ポリウスの騎士団長を陥れたいのか、だとしてもなぜこんな手間のかかる危ないことをする必要があるのか。

(話を聞いてみないことにはどうしようもないか)

「……わかりました。空いている部屋があるのでそちらで」
「話が早くて助かるよ」

 アレクを近くの空き部屋に通そうとしたガイズは、一瞬だけ何かに気づく。だが、すぐにアレクを部屋へ入れ、鍵をかけた。


< 117 / 120 >

この作品をシェア

pagetop