隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません

32 一触即発

「ダ、リオス、様……?」

 ダリオスからの口づけが終わると、セイラはすっかり蕩けた顔でダリオスを見つめる。そんなセイラの顔に、ダリオスの理性は今にも限界を迎えそうだった。

(だめだ、せめて屋敷に着くまでは我慢しないと)

 セイラの両肩を掴みながら俯き、ダリオスはふーっと大きく息を吐く。

「ごめん、セイラ。愛おしさが溢れてしまった……それに、そんな顔されたら気持ちが制御できなくなりそうだよ。けど、屋敷まではちゃんと我慢する。だから、屋敷に着いたら覚悟してくれ」

 ダリオスの言葉に、セイラはぼんやりとした顔から、目が真ん丸に開かれ顔が真っ赤になっていく。

(本当に俺の奥さんは可愛すぎるな。可愛すぎて心配になる。絶対に手放さないし誰にも渡さない)

 ダリオスはフッと微笑んでからセイラの頬に優しくキスを落とす。それから、セイラの腰に手を回して、屋敷に着くまで密着したままだった。



 ポリウスの国王と表の聖女の仮処分が決まってから一週間後。セイラとダリオスは、王都の一角にあるレインダムの騎士団本部に来ていた。

 騎士団本部の会議室に、レインダムの騎士団長バルト、レインダム最強の騎士ダリオス、そしてセイラが座っている。
 その真向には、ポリウスの騎士団長ガイズがいた。緑がかった黒髪の短髪に若草色の瞳、がっしりとした体格の持ち主だ。

「セイラ様、お久しぶりです」
「ガイズ!お久しぶりです。元気そうでよかった」

 セイラがそう言って微笑むと、ガイズは静かに頭を下げた。そんな二人を、ダリオスは真顔で見つめている。ガイズは頭を上げるとダリオスの視線に気づき、冷ややかな視線を返した。

「セイラ様、この度は私が王城にいなかったばかりにこんなことになってしまい、申し訳ありません。私が王たちと共にいれば、王の行いを止めることができたかもしれないのに……本当に申し訳ありません」

(確かに、ガイズがあの場にいたなら、きっとお父様はあんな暴挙には出なかったはずだわ)

 ガイズはセイラの父親が間違ったことをしようとするたびにそれを既のところで止める役割をしていた。
 王城でセイラの父親がダリオスとクレアに刃を向けようとした時、ガイズがいたとしたらきっと状況は変わっていただろう。
 それほどまで、ポリウスの騎士団長は発言力が高く、王家からの信頼も厚かった。

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