隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません

37 騎士団長の思惑

「セイラ様!お疲れ様です!」
「ルルゥ、今回はどうぞよろしくね」

 クレアとの話し合いから数日後。セイラが元ポリウスの浄化のために転移魔法で現地に到着すると、元ポリウスの筆頭魔術師ルルゥと騎士団員たちがいた。その中には、騎士団長のガイズもいる。

「セイラ様、よくお越しくださいました」
「ガイズも任務お疲れ様です。まさか騎士団長のあなたがいるとは思いませんでした」
「今回は浄化が必要な場所を三カ所も周ります。しかも瘴気が強い場所ばかりですので、どんな魔獣がいるかわかりません。ハロルド卿が同行しないと聞いたので、自分が来るべきだと判断しました。セイラ様のことは俺がお守りします」
「セイラ様を守るのは私もですよ!」

 ガイズの言葉に、ルルゥが身を乗り出して宣言する。

(ダリオス様がいなくて少し寂しいと思ってしまったけれど、そんなこと言っている場合じゃないわね。みんな、元ポリウスと私のためにこうして来てくれているんだもの。気を引き締めなくちゃ)

「ありがとう、心強いわ」

 セイラがそう言ってフワッと微笑むと、ルルゥもガイズも、その場にいた他の騎士たちも思わず顔をほんのりと赤らめる。ガイズはコホンと咳払いをしてからセイラに話しかけた。

「セイラ様、ポリウスにいた頃はよくフードを被っていらっしゃいましたが、今は被っていないのですね」
「確かに。あの頃はいつもフードを被って顔は絶対に見せないようにしていましたよね。やはり、ルシア様が表の聖女だからですか?」

 ルルゥも不思議そうにセイラに尋ねる。ガイズとルルゥの質問に、セイラは苦笑して答えた。

「そうね、あの頃は私は裏聖女で、ルシアより目立ってはいけないし、影でいることが当たり前だった。それを嫌だと思ったことはなかったし、それが当たり前だと思っていたの。でも、レインダムでレインダムの聖女として過ごすうちに、ダリオス様からフードを被る必要はないと言われて……私は、私のままでいいと言ってもらえた。だから、いつの間にかフードを被ることは無くなっていたわ」

 少し照れたように頬をほんのりと赤らめていうセイラを見て、ルルゥは嬉しそうにはしゃぐ。

「ハロルド卿、セイラ様のことをいつも見ていて、大切で仕方がないと言わんばかりですもんね!セイラ様はハロルド卿と出会って変わったんですね」

 ルルゥがふふふ、と嬉しそうにそう言うと、セイラも嬉しそうに笑って、控えめに小さく頷いた。そんなセイラを見て、ガイズはほんの少しだけ不機嫌そうな顔になる。

「……セイラ様は今までの目立たない控えめなセイラ様で十分素敵だったのに。聖女として目立ってしまったら、セイラ様の魅力に気づく人間が増えてしまう」
「え?」

 ボソリ、とガイズがつぶやくが、その声は誰の耳にも届かない。

「いえ、何でもありません。それでは、我々は危険がないか周囲を少し見て回ります。お二人はここでお待ちください」
「……わかりました、お願いします」

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