ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。

聖女候補の秘密

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 ところでクララがなるであろう聖女というのは、王国に複数存在する。男性の聖人もしかり。
 聖力を持つ者はそこそこ稀少だ。彼らは聖会に所属し、人々のために働くのが原則だった。

 とはいえ聖力でできることは限られている。
 癒しの効果はあるが、みるみる傷を治すようなことはできなかった。治癒力を底上げするのがせいぜいだ。
 では聖会は何を行っているのか。

 聖力は主に――魔力へ対抗する結界の維持に使われていた。

 王国の外に存在する魔物。魔物たちは人間の国々を隙あらば蹂躙しようとした。
 ゆえに聖会は国境に結界を張る。国々をつなぐ街道を守護する。聖会の活動がなければ貿易もままならない。
 すなわち聖会は、対魔の戦闘組織としての性格も併せ持つのだった。

「でもクララさんは学園で勉強させられている。それはどうしてです?」

 ルーシーの質問はアーサーへ向けたものだ。

 ここは新聞部の部室。
 乱雑に資料が積まれた机の前に座る超絶イケメンが、おそろしいほど場に似合わない。圧倒的な光がそこにいた。
 他の部員たちはアーサーに追い出されていた。ルーシーとサシで話すためだそうだが横暴すぎる。

「――彼女の聖力は、異常値なんだ」

 アーサーは淡々と極秘事項をバラした。

「不安定というか。非常に強い時もあるが、使えなくなるほど弱まりもする。若さのせいかもしれないとの判断で、ひとまず勉学の場に保護している」
「へええ……苦労してるんですね」
「稀に現れるケースだそうだ。実力が安定すれば、後々聖会の中枢に入るかもな。だから学園で学ぶ意味はある」
「おお、クララさん出世の可能性!」
「彼女は特に癒しにすぐれているらしいので、前線に出てもらえればありがたいな……」

 アーサーはすでに国政を見据えて物事を考えている。国を守り導く気概を持っているのはさすがだ。

「ところでクララの小間使いのことだが」
「はいはい、供述取れましたか」

 この密会は情報交換のため。それぞれが調査した成果を報告するのが目的だった。

「やはり留守番していた。誰も連れてくるなと指示されたので独りで出かけたと」
「てことは、キャサリンさんと会ったのを誰も見てないんですね」
「ああ」

 ふむ、とルーシーは唇を結んだ。
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