これは私が望んだ復讐です
28話 調子のいい男
――私の籍が侯爵家から抜け、平民になっている
その言葉にすぐさま反応したのは、意外にもオーエン様だった。ワナワナと震えながら立ち上がり、陛下のもとに駆け寄っていく。
「父上! 本当にこんなことをしたのですか! それでは、もし私との結婚前に侯爵が死んでいたら、スカーレットは路頭に迷っていたではないですか!」
掴みかかるように責められ、陛下は驚愕の顔で息子を見ている。父親に逆らうことなどしないオーエン様が、私のために怒っている。その姿にシャルロットの瞳がギラリと光った。
(でも、こればかりはオーエン様の言うとおりね。きっと父はシャルロットのために遺言も残しているでしょうし)
それでも私を擁護するオーエン様を見ていると、驚きよりも嫌悪感のほうが先に立つ。今さらなんだっていうのかしら? 私が頑張っている時には突き放しておきながら、かわいそうな立場だとわかると英雄気取りで助け出す。
(あなたもやっぱり陛下の子ね。調子がいいわ)
そう思ったのは私だけじゃなかったようだ。息子の反抗的な態度に苛立った陛下は、ドンとオーエン様を突き飛ばすと、顔を真っ赤にして叫びだした。
「黙れ! スカーレットはおまえの婚約者にしたではないか! それに平民になってからも、ずっと貴族としての暮らしを許可していたのだぞ! 何不自由ない暮らしだってさせていただろう! しかも聖女だのと教会にもてはやされ、その地位だって見逃してやっていた。それになんの不満があるというのだ!」
(は……? 私の今までの暮らしが、何不自由ない暮らし? 私が教会にもてはやされてた? それはいったいどこのスカーレットなのかしら?)
本当に陛下は私の妃教育の苦労や、聖女としての働きを認めていなかったようだ。痣だらけで痩せ細り、それでもこの国のためにと頑張ってきたのに。
「もうよろしいでしょうか?」
私は「はあ……」と特大のため息を吐き、立ち上がった。シモン様はそんな私を見て、スッと腕を出しエスコートし始める。
これ以上は、時間の無駄ね。自分さえ良ければいいという考えの人達に、私の苦労や悲しみなど理解できないだろう。
(結界も数日中には壊れる。ならば早くこの国を出たほうがいいわ。もし災害が起きて被災者が出たら、聖女なんだから責任を取れと言われかねないもの)
私はシモン様の腕に手をかけ、部屋を出ていこうと歩き始める。するとその様子を見てあわてたのは、なぜかオーエン様だった。
「スカーレット! 待ってくれ!」
「……なんでしょう?」
振り返ることもせず、私はうんざりした気持ちで返事をする。オーエン様はそんな無礼な態度も気にならないようで、戸惑いがちに話し始めた。
「父上や侯爵を、罪に問わなくていいのか……?」
「…………」
最初にこの話をシモン様から聞いた時は、二人には相応の裁きが下るべきだと思った。そうじゃないと怒りが収まらない。そう思っていたのだけど……。
私はシモン様と顔を見合わせ頷いた後、オーエン様のほうを振り返って微笑んだ。
「別にいいですわ。わたくしはもう、この国から出ていく身。皆様にはお世話になりましたし、わたくしにはシモン様がおります。これ以上、ことを荒立て国が荒れる原因を作りたくありませんわ」
(そう。私はこれ以上、私のことが原因でことを荒立てたくないの)
私がにっこり笑ってそう言うと、オーエン様は「そうか……」と呟き、不満そうな顔で椅子に座った。反対に陛下たちはホッとした顔をしている。
(馬鹿ね。私はあなた達を跪かせる事を、あきらめたわけじゃないのよ?)
私は皆にわからないようにクスッと笑うと、堂々とした態度で陛下のほうに向き合った。
その言葉にすぐさま反応したのは、意外にもオーエン様だった。ワナワナと震えながら立ち上がり、陛下のもとに駆け寄っていく。
「父上! 本当にこんなことをしたのですか! それでは、もし私との結婚前に侯爵が死んでいたら、スカーレットは路頭に迷っていたではないですか!」
掴みかかるように責められ、陛下は驚愕の顔で息子を見ている。父親に逆らうことなどしないオーエン様が、私のために怒っている。その姿にシャルロットの瞳がギラリと光った。
(でも、こればかりはオーエン様の言うとおりね。きっと父はシャルロットのために遺言も残しているでしょうし)
それでも私を擁護するオーエン様を見ていると、驚きよりも嫌悪感のほうが先に立つ。今さらなんだっていうのかしら? 私が頑張っている時には突き放しておきながら、かわいそうな立場だとわかると英雄気取りで助け出す。
(あなたもやっぱり陛下の子ね。調子がいいわ)
そう思ったのは私だけじゃなかったようだ。息子の反抗的な態度に苛立った陛下は、ドンとオーエン様を突き飛ばすと、顔を真っ赤にして叫びだした。
「黙れ! スカーレットはおまえの婚約者にしたではないか! それに平民になってからも、ずっと貴族としての暮らしを許可していたのだぞ! 何不自由ない暮らしだってさせていただろう! しかも聖女だのと教会にもてはやされ、その地位だって見逃してやっていた。それになんの不満があるというのだ!」
(は……? 私の今までの暮らしが、何不自由ない暮らし? 私が教会にもてはやされてた? それはいったいどこのスカーレットなのかしら?)
本当に陛下は私の妃教育の苦労や、聖女としての働きを認めていなかったようだ。痣だらけで痩せ細り、それでもこの国のためにと頑張ってきたのに。
「もうよろしいでしょうか?」
私は「はあ……」と特大のため息を吐き、立ち上がった。シモン様はそんな私を見て、スッと腕を出しエスコートし始める。
これ以上は、時間の無駄ね。自分さえ良ければいいという考えの人達に、私の苦労や悲しみなど理解できないだろう。
(結界も数日中には壊れる。ならば早くこの国を出たほうがいいわ。もし災害が起きて被災者が出たら、聖女なんだから責任を取れと言われかねないもの)
私はシモン様の腕に手をかけ、部屋を出ていこうと歩き始める。するとその様子を見てあわてたのは、なぜかオーエン様だった。
「スカーレット! 待ってくれ!」
「……なんでしょう?」
振り返ることもせず、私はうんざりした気持ちで返事をする。オーエン様はそんな無礼な態度も気にならないようで、戸惑いがちに話し始めた。
「父上や侯爵を、罪に問わなくていいのか……?」
「…………」
最初にこの話をシモン様から聞いた時は、二人には相応の裁きが下るべきだと思った。そうじゃないと怒りが収まらない。そう思っていたのだけど……。
私はシモン様と顔を見合わせ頷いた後、オーエン様のほうを振り返って微笑んだ。
「別にいいですわ。わたくしはもう、この国から出ていく身。皆様にはお世話になりましたし、わたくしにはシモン様がおります。これ以上、ことを荒立て国が荒れる原因を作りたくありませんわ」
(そう。私はこれ以上、私のことが原因でことを荒立てたくないの)
私がにっこり笑ってそう言うと、オーエン様は「そうか……」と呟き、不満そうな顔で椅子に座った。反対に陛下たちはホッとした顔をしている。
(馬鹿ね。私はあなた達を跪かせる事を、あきらめたわけじゃないのよ?)
私は皆にわからないようにクスッと笑うと、堂々とした態度で陛下のほうに向き合った。