これは私が望んだ復讐です
40話 愚かな考え オーエンSIDE
「オーエン殿下。シャルロット様がお会いしたいと、来ていらっしゃいますが……」
側近の報告に、ピクリと眉を動かしペンを止める。
(またか。あの性悪女め!)
「追い返せ! 会う気はないし、もう私に取り次ぐな!」
「かしこまりました」
側近に背を向けたまま吐き捨てるようにそう言うと、ペンを置き大きくため息を吐く。
(本当に恥知らずな女だ。化けの皮が剥がれたというのに、それでも私に会いに来るとは!)
あれからシャルロットの男性関係を調べたところ、五人の男と関係をもっていたことがわかった。検査の結果、妊娠は事実だったが父親が誰かわからない。
(本人は私の子だと言い張っているが、そんなの嘘だ! 私は彼女と最後まではしていない)
やはり私の運命の相手は、スカーレットだったのだ! もともと私は知性的な女性が好きだ。不吉な黒髪は嫌いだったが、彼女との婚約に乗り気ではあったのだ。
シャルロットにもそう言ったのに、「じゃあなぜ、わたくしと関係を持ったのか」とゴチャゴチャうるさい。妹と親密になったのはただ「スカーレットに嫉妬してもらいたかった」からなのに。
忙しいスカーレットの身代わり。ただそれだけ。あの姉妹は声が似ているから、目をつむればスカーレットが私に甘えているようで楽しかった。
まあ、たしかにシャルロットの豊満な体を楽しみはしたが、中身に興味はない。だいたい父親の侯爵が手を付けていいと言ったから、私も遠慮なく遊んだんだ。
(それを今さら、妻にしろとは。あんな頭空っぽの女にこの国の妃が務まるはずないだろう)
だいたい不正を働いた侯爵は信用ならない。きっとシャルロットなら自分の言いなりになるから、私の妃にしたいのだろう。陛下もこの機会に退位してくださればいいのに。
(きっとスカーレットと私なら、すぐにでも国を治めることができたはずだ。彼女は聖女として国民に人気があるし、私だって能力はある)
それなのに、スカーレットは隣国カリエントの王子と婚約してしまった。
「シモンめ……!」
きっと純粋なスカーレットは、シモンに言いくるめられたのだろう。もともと権力欲がある女ではない。世間知らずな彼女は、まんまと悪い男に騙されてしまったのだ。
「クソッ! なぜあの時、シモンの婚約者のことを思い出さなかったんだ!」
今思い返してみても、悔しい。あの時は混乱していて、シモンにはカリエントに婚約者がいるということをすっかり忘れていた。認めるのは癪だが、ヤツの威圧感で頭が真っ白になって気づかなかった。
(どうにかスカーレットを取り戻す方法はないだろうか……)
彼らが国を去ってからすぐに婚約者の存在を思い出した私は、すぐにスカーレットに手紙を出した。まだ書類上は私の婚約者であること、シモンには婚約者がいるのだから二重婚約にあたること。
(そのうえ寛大にも、勝手に国を出たことを許してやると伝えたのに!)
返事を書いてきたのは、シモンだった。きっとスカーレットに手紙も見せていないのだろう。
「スカーレットの貴族籍が抜けているので、書類は自動的に無効になっている」「婚約者はいない」と短い手紙をよこし、その上すぐにカリエントの国中に婚約の発表をしたらしい。
きっとこの国でしていたみたいに、スカーレットを聖女に仕立て上げたのだろう。そうすれば王族の人気は高まるからな。
「きっとカリエントで肩身が狭い思いをしているのだろうな。かわいそうに」
スカーレットのあの不吉な黒髪。そしてもともといたシモンの婚約者を追い出す形で結婚となると、かなり憎まれているはずだ。
「かわいそうなスカーレットだ。早く私が救ってあげなくては……」
まだ二人は結婚はしていない。なにやら魔術で婚約契約をしたらしいが、そんなの嘘だろう。魔力がない我が国を騙すには、魔術は言い訳にちょうどいい。
苦々しい気持ちで二人のことを考えていると、ふとある案が頭に浮かんだ。
(そうだ! 直接スカーレットを迎えにいこう!)
いい思いつきだ。きっと今頃スカーレットは周囲に認められず虐められ、この国に帰りたくなっているはず。迎えに行けば、さぞや喜ぶだろう。
私は久しぶりに心が浮き立ち、早速予定を立てようと立ち上がる。すると同時に部屋の扉が乱暴に開き、宰相があわてて入ってきた。
「で、殿下! 城に民衆が集まってきて、暴動が起こっております!」
「なんだと! なにが起きたんだ!」
(騎士団はなにをしているのだ。いや、その騎士たちも戸惑うほど、民衆が集まっているということか?)
「それが『聖女様をなぜ追い出したんだ! オーエン殿下をひっ捕らえろ!』と叫んでいるのです。殿下、万が一のことがありますので奥の部屋に行きましょう!」
「私を狙っているのか!?」
にわかに信じられない気持ちでいると、サッと護衛が私のまわりを囲んだ。そして宰相に押されるように、執務室を追い出される。無事奥の部屋に着いたが、まったく意味がわからない。なぜ民衆たちが私に対して怒りを向けるのか。
すると青ざめた宰相が、言いにくそうに説明し始めた。
側近の報告に、ピクリと眉を動かしペンを止める。
(またか。あの性悪女め!)
「追い返せ! 会う気はないし、もう私に取り次ぐな!」
「かしこまりました」
側近に背を向けたまま吐き捨てるようにそう言うと、ペンを置き大きくため息を吐く。
(本当に恥知らずな女だ。化けの皮が剥がれたというのに、それでも私に会いに来るとは!)
あれからシャルロットの男性関係を調べたところ、五人の男と関係をもっていたことがわかった。検査の結果、妊娠は事実だったが父親が誰かわからない。
(本人は私の子だと言い張っているが、そんなの嘘だ! 私は彼女と最後まではしていない)
やはり私の運命の相手は、スカーレットだったのだ! もともと私は知性的な女性が好きだ。不吉な黒髪は嫌いだったが、彼女との婚約に乗り気ではあったのだ。
シャルロットにもそう言ったのに、「じゃあなぜ、わたくしと関係を持ったのか」とゴチャゴチャうるさい。妹と親密になったのはただ「スカーレットに嫉妬してもらいたかった」からなのに。
忙しいスカーレットの身代わり。ただそれだけ。あの姉妹は声が似ているから、目をつむればスカーレットが私に甘えているようで楽しかった。
まあ、たしかにシャルロットの豊満な体を楽しみはしたが、中身に興味はない。だいたい父親の侯爵が手を付けていいと言ったから、私も遠慮なく遊んだんだ。
(それを今さら、妻にしろとは。あんな頭空っぽの女にこの国の妃が務まるはずないだろう)
だいたい不正を働いた侯爵は信用ならない。きっとシャルロットなら自分の言いなりになるから、私の妃にしたいのだろう。陛下もこの機会に退位してくださればいいのに。
(きっとスカーレットと私なら、すぐにでも国を治めることができたはずだ。彼女は聖女として国民に人気があるし、私だって能力はある)
それなのに、スカーレットは隣国カリエントの王子と婚約してしまった。
「シモンめ……!」
きっと純粋なスカーレットは、シモンに言いくるめられたのだろう。もともと権力欲がある女ではない。世間知らずな彼女は、まんまと悪い男に騙されてしまったのだ。
「クソッ! なぜあの時、シモンの婚約者のことを思い出さなかったんだ!」
今思い返してみても、悔しい。あの時は混乱していて、シモンにはカリエントに婚約者がいるということをすっかり忘れていた。認めるのは癪だが、ヤツの威圧感で頭が真っ白になって気づかなかった。
(どうにかスカーレットを取り戻す方法はないだろうか……)
彼らが国を去ってからすぐに婚約者の存在を思い出した私は、すぐにスカーレットに手紙を出した。まだ書類上は私の婚約者であること、シモンには婚約者がいるのだから二重婚約にあたること。
(そのうえ寛大にも、勝手に国を出たことを許してやると伝えたのに!)
返事を書いてきたのは、シモンだった。きっとスカーレットに手紙も見せていないのだろう。
「スカーレットの貴族籍が抜けているので、書類は自動的に無効になっている」「婚約者はいない」と短い手紙をよこし、その上すぐにカリエントの国中に婚約の発表をしたらしい。
きっとこの国でしていたみたいに、スカーレットを聖女に仕立て上げたのだろう。そうすれば王族の人気は高まるからな。
「きっとカリエントで肩身が狭い思いをしているのだろうな。かわいそうに」
スカーレットのあの不吉な黒髪。そしてもともといたシモンの婚約者を追い出す形で結婚となると、かなり憎まれているはずだ。
「かわいそうなスカーレットだ。早く私が救ってあげなくては……」
まだ二人は結婚はしていない。なにやら魔術で婚約契約をしたらしいが、そんなの嘘だろう。魔力がない我が国を騙すには、魔術は言い訳にちょうどいい。
苦々しい気持ちで二人のことを考えていると、ふとある案が頭に浮かんだ。
(そうだ! 直接スカーレットを迎えにいこう!)
いい思いつきだ。きっと今頃スカーレットは周囲に認められず虐められ、この国に帰りたくなっているはず。迎えに行けば、さぞや喜ぶだろう。
私は久しぶりに心が浮き立ち、早速予定を立てようと立ち上がる。すると同時に部屋の扉が乱暴に開き、宰相があわてて入ってきた。
「で、殿下! 城に民衆が集まってきて、暴動が起こっております!」
「なんだと! なにが起きたんだ!」
(騎士団はなにをしているのだ。いや、その騎士たちも戸惑うほど、民衆が集まっているということか?)
「それが『聖女様をなぜ追い出したんだ! オーエン殿下をひっ捕らえろ!』と叫んでいるのです。殿下、万が一のことがありますので奥の部屋に行きましょう!」
「私を狙っているのか!?」
にわかに信じられない気持ちでいると、サッと護衛が私のまわりを囲んだ。そして宰相に押されるように、執務室を追い出される。無事奥の部屋に着いたが、まったく意味がわからない。なぜ民衆たちが私に対して怒りを向けるのか。
すると青ざめた宰相が、言いにくそうに説明し始めた。