再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

フォード家

「フォード家と言えば、ドラムトン王国では古くから公爵家として国を支えてきた重要な家門だった。当時、フォード家は魔力が飛び抜けて高くてな。王族の親戚ということもあり、かなりの権力を誇っていたらしい」


 王様によると、そんなフォード家は千年前、その高い魔力を駆使して戦争において大活躍をした。その時に作り出したのが、瘴気だったらしい。


「当時の記録は多くないが、とんでもない威力だったという。隣国の辺り一体が瘴気に包まれ、あちこちに魔獣が飛び出し人々に襲いかかった。その結果、戦争はあっけなく終わったそうだ。本来ならそんな瘴気を作り出し国の勝利に貢献したフォード家は王より褒美を得るはずだった。しかし、それは叶わなかった」

「どうして、ですか?」

「当時の王が、恐れたんだ。瘴気を目の当たりにしたからだろう。今となっては憶測に過ぎないが、おそらくフォードにこれ以上権力を持たせてしまったら、国が乗っ取られると思ったのだろう」


 確かに、戦争をあっという間に終わらせてしまうような瘴気を作り出すことができるなら、王族を襲って国を我がものにすることなど簡単なことなのかもしれない。


「だから当時の王は、すぐにフォードを捕らえて投獄したんだ」

「投獄……!?」

「あぁ。詳しい罪状までは記されていなかったが、おそらく適当な罪をでっちあげたのだろう。そうして魔力を封じる枷で拘束して、地下深くに閉じ込めた」

「そんな……」

「そして瘴気を作り出す方法は全て処分され、方法を知っている者は同じように投獄させられたんだ。悪用して反逆を起こされたら困るから、とな」


 当時の王様は自分の地位を守りたかっただけかもしれない。だけど、それはフォード公爵だって同じだったのでは?国のために必死に戦って、ようやく終わって。それなのに全てを奪われて投獄されただなんて。それってあまりにも……フォード公爵が、あまりにも可哀想じゃないか。


「その後フォード公爵は牢獄の中で生き絶えた。残った家門の者たちは、記憶を消されハリスに閉じ込められ、外に出ることを禁じられた。高い魔力があっても、瘴気を起こす方法を知らなければ安全だと踏んだのだろう。……もしかしたら、ハリスの魔石を悪用する者が出ないように、監視の意味もあったのかもしれない」


 王様はそう呟き、そして立ち上がる。


「おそらくカイエン・フォードは当時のフォード公爵の末裔だろう。彼が何を思って神殿にやってきたのかはわからないが、今は瘴気問題の重要参考人だ。すぐにロードに連絡してカイエンを連れてこよう」

「でももう出立してしまったのに。そんなことできるのですか!?」

「なに、わしは王だ。王にできないことなどない」


 そう笑うと、王様は


「宰相よ!」


 叫ぶように宰相様を呼び、


「今すぐにロードに告げ。撤退だと。そして、カイエン・フォードをここに連れてくるがいい。いいか、今すぐにだ。事態は一刻を争う! 急げ!」


 そう指示を出した。


「承知いたしました」


 宰相様はすぐに転移魔法を繰り出し、そして姿を消す。


「聖女セーラよ。感謝する。だが、まだそなたにはやってもらわねばならないことがある。しかと頼んだぞ」

「……はい。お任せください」


 私のやるべきことは、一つだけだ。

 そのためにも、今はただロード様たち皆が無事に戻ってくることを祈ろう。

 ……そう、思っていたのに。

 私の元へ戻ってきたのは、ロード様とセイロン様が捕らわれたという連絡だけだった。
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