再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

独白

「……カイエン様。どうしてこんなことを」

「どうして、か。それは、セーラ様ならもうわかっていらっしゃるのでは?」


 だからここに来たのでしょう?

 そう呟くカイエン様に、私は拳を握り直す。


「カイエン様。私と引き換えに、まず二人を解放してください」

「いいでしょう。あの二人には興味はありません。私は、セーラ様。あなたが手に入ればそれでいい」


 そう言いながら二人の拘束を解いたカイエン様は、そのまま転移魔法陣を出して二人をその場から消してしまった。


「カイエン様!? 二人をどこに!」

「ご安心ください。この魔鉱山の外に出しただけです。騎士団の連中がいたでしょう。催眠も解いたのですぐに目を覚ますはずですよ」


 そう言われて、安心して息を吐く。


「それよりも。あなたも無鉄砲ですね。それともただ頭が悪いだけなのでしょうか」

「……どういう意味ですか」

「そのままの意味です。こんなところに一人で乗り込んでくるなんて、無鉄砲そのものじゃありませんか」

「あなたがそう仕向けたんでしょう」

「そうですよ? ですが、本当に一人で来るとは思わないじゃないですか。あの王様をどうやって説得なさったんですか?」


 興味津々と言いたげな表情で私を見つめ、答える気がないとわかるとすぐに肩をすくめた。


「……私を手に入れて、一体どうしたいのですか? 殺すのですか? 利用するのですか?」

「どちらだと思います?」


 まるで、おもちゃを目の前にした子どものような無邪気な笑みだった。

 それが不気味で、怖くて。

 カイエン様が何を考えているのかが全くわからない。


「まぁ、まずは座りましょう。お茶でもいかがです?」

「……何を言っているんですか?」


 こんなところでお茶?座る?本当に意味が理解できない。

 だけどカイエン様はきょとんとしてから、魔法でテーブルと椅子を作り上げてしまう。


「立ち話は疲れますから。ほら、私はここであなたが来るのをずっと待っていたんですよ。少しは座らせてください」


 そう言いながら椅子に腰掛ける姿は、いつものカイエン様の背筋の伸ばし方で。

 もう、何が何だかわからない。

 カイエン様がパッと手を出せば、次の瞬間には淹れたての紅茶とクッキーが現れる。


「さ、飲みましょう」


 上品な仕草で紅茶を飲む姿を見つめていると、


「毒なんて入っていませんよ。セーラ様は大事なお客様ですからね。安心してください。どうせ瘴気問題でバタバタしていて、ろくに食べていないんでしょう?」


 図星を突かれて目を逸らす。
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