悪魔の娘が帰還するまでーささやかな復讐と聖女の称号を添えてー

第四十章:後払いの回収

「子の血で繁栄を買う者に、王冠は似合わぬ」

 裁判判決は早かった。王と王太子、エルフォード公爵夫妻、エルフォード家の魔術師は斬首刑となった。

 王も車椅子に乗っての裁判だったが、他の四名は悲惨であった。このまま楽に死なせてはならぬという医師たちの執念とも言える治療のおかげで、死ぬほどの怪我ながら生きていた。

 痛み止めの効き切らない全身の痛みを抱え、無くした皮膚を補う薬剤ジェルを塗りたくり、裁判の間は辛うじて病衣に近い布を着けているような状態だった。

 息を吸う度に喉と肺が痛む。それでも必死にエルフォード夫人は訴えた。
「殺して…早く殺して…」

罪状とともに名が読み上げられる。

 処刑の日、広間は祭りのような熱気と人で埋まった。刃が鈍い光を吐いて落ちる。

首が石畳に転がるや、民衆は石を投げ、歓声を上げた。
長年押し殺してきた憤怒が、ついに行き場を得たのだ。

 アルヴェインだけは異質だった。斬首台前で民の投石が幾つも当たり血を流していた。そろそろ執行の邪魔になるというところで、係が民衆を押さえると、その時、アルヴェインの身体から赤い煙が立ち上った。

「ぎゃあああぁあぁああああああああ!!!!!」

喉から血を噴くような絶叫に、広場中がどよめいた。
アルヴェインの頭上には大きな蝙蝠のような翼の悪魔が、嗤いながら浮いていた。

「殿下、後払いとは言え、死ぬまでには払っていただかないと……」

身体中の血液を搾り取られたアルヴェインは枯れ木のようだった。
係が両脇を支え、抱えるようにして、まだ息があるのを確かめた。
「まだ息がある…!」
「良かった!」

アルヴェインの目が笑顔の係を捉えて新しい涙を浮かべた。

「死なれちゃ執行できないもんな」
そう言ってアルヴェインの首を断頭台に置いた。

(助けて……)
アルヴェインは救いの手を思い浮かべる。
国王である父、完璧な婚約者オリヴィア、予言の乙女アイラ、

だが全て既にこの世にいなかった。
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