辺境のちっちゃな捨てられ領主は敵国女帝のお気に入りのようです~転生幼児、最強の家族とスキルを持つ秘密兵器でした~
プロローグ
ルーヴェルン王国とヴァルティクローネ帝国の国境地域。
 普段はほとんど人の姿を見ることのない場所だが、今はヴァルティクローネ帝国側には多数の兵が布陣していた。
 陣地内に並んだ多数のテント。夜番で警戒にあたっている者以外は、明日の魔物討伐に備えて少しでも身体を休めようとしている。

「……ルーヴェルン王国にも困ったものだ。魔物は間引かねばならないというのに」

 ワインのグラスを手に嘆息したのは、リュディア・タルヴィゲルト――ヴァルティクローネ帝国を治める女帝だ。
 彼女が帝位についたのには先代皇帝の意志があるが、女性の即位に納得していない貴族達を抑えるためにも今回の討伐は失敗できない。

「ラプハート辺境伯領を奪えれば、問題は発生しませんな」

 と、薄く笑ったのは、彼女の腹心の部下であるラウガルト・シルト。政治の面でも、軍事の面でも常に女帝の側にいて彼女を支えている。
 短く刈った黒髪、鍛え上げられた体(たい)躯(く)。リュディアの護衛も兼ねている彼の黒い目には、沈(ちん)鬱(うつ)な色があった。

「ラウガルト、何か気になることでも?」
「いえ――いや、静かすぎる、と」

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