転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!
21 潜む陰影
王宮の西翼、金糸の刺繍が施された緋色のカーテン越しに、午後の陽光が床を照らしていた。
そこは王太子妃アリシア・セレスティアの私室。
優雅な香が漂うその部屋の中心で、アリシアは静かに扇を動かしていた。
「……なにやら聖女が、民の人気を得ているそうですね」
侍女の報告に、アリシアは目を細める。
その仕草は猫のようで、どこか艶やかだった。
「ええ。光の奇跡、でしたか。確かに美しい演出でした。民草は単純ですもの。光と歌と慈愛の笑みがあれば、すぐに妄信します」
齢を重ねた侍女の言葉に、中年の侍女が答える。
「教会の中でも、奇跡だと評価する声があがりはじめているようです」
能天気に繰り出された声を、アリシアは冷たく睥睨する。
「そうなのね」
ぱたりと扇を閉じる音が、部屋に冷気を呼んだように響いた。
アリシアは立ち上がり、絨毯に銀糸で織り込まれた王都の地図の上をゆっくりと歩いた。
そして、爪先で聖教会の奥に在る『塔』の位置を抉るように踏みつける。
「あの子が何者か……教皇が興味を示すのも、無理はありません」
彼女は、『神託の儀』の真実にほんの一端だけ触れていた。
正直、彼女にとって魂を弄ぶ魔術など忌むべきものであり、本来なら興味の対象にすらならなかった。
だがしかし、収穫祭――あの式典の日、舞台の上で祈りを捧げる少女の姿を目にしたとき、アリシアの記憶が鮮やかに蘇ったのだ。
かつて、王太子が戯れに愛した女性。
その面影が、少女の顔にピタリと重なった。
アリシアは唇を噛み、胸元の宝飾を憎々しげに握りしめる。
そこは王太子妃アリシア・セレスティアの私室。
優雅な香が漂うその部屋の中心で、アリシアは静かに扇を動かしていた。
「……なにやら聖女が、民の人気を得ているそうですね」
侍女の報告に、アリシアは目を細める。
その仕草は猫のようで、どこか艶やかだった。
「ええ。光の奇跡、でしたか。確かに美しい演出でした。民草は単純ですもの。光と歌と慈愛の笑みがあれば、すぐに妄信します」
齢を重ねた侍女の言葉に、中年の侍女が答える。
「教会の中でも、奇跡だと評価する声があがりはじめているようです」
能天気に繰り出された声を、アリシアは冷たく睥睨する。
「そうなのね」
ぱたりと扇を閉じる音が、部屋に冷気を呼んだように響いた。
アリシアは立ち上がり、絨毯に銀糸で織り込まれた王都の地図の上をゆっくりと歩いた。
そして、爪先で聖教会の奥に在る『塔』の位置を抉るように踏みつける。
「あの子が何者か……教皇が興味を示すのも、無理はありません」
彼女は、『神託の儀』の真実にほんの一端だけ触れていた。
正直、彼女にとって魂を弄ぶ魔術など忌むべきものであり、本来なら興味の対象にすらならなかった。
だがしかし、収穫祭――あの式典の日、舞台の上で祈りを捧げる少女の姿を目にしたとき、アリシアの記憶が鮮やかに蘇ったのだ。
かつて、王太子が戯れに愛した女性。
その面影が、少女の顔にピタリと重なった。
アリシアは唇を噛み、胸元の宝飾を憎々しげに握りしめる。