転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

28 反撃の舞台裏

 まるで遊撃戦だ。

 黒灰の長い外套に身を包んだ理央は、王都の路地裏を駆け抜けていく。
 光の残滓を撒き散らしながら。
 いかんせん、理央自身この『謎の光(魔力)』を発する力をそこまで制御できていないため、この状況は完全に予定外である。
 分厚いフードを頭からすっぽり被っていても、夜の闇に光の粒子が零れ落ちていく。
 ついでに全力疾走しているので、中々に目立つ。

 だが、決してやけくその行動ではない。確かな目的があった。

「リオさま、こ、こ、こちらに!」

 養護院の裏手門から、敷地内に身を滑り込ませる。
 ここは教会直営の養護院である。
 だがしかし、教会上層部からはとうの昔に見放され、一部の神官の善意によってほそぼそとなんとか運営が続けられている場所だった。

 地味に長く続く隣国との衝突で、フォリフォンヌ王国の戦災孤児は増加の一途を辿っている。
 カナンもまた、尊い犠牲があってこそ存在する一人である。

 聖女付き侍女を唐突に解雇されたカナンには、この養護院以外に帰る場所は無い。
 まだ成人していないとはいえ、養護院で暮らしている子供たちの中でも成年に近い彼女は運営の助けとなるべく、侍女を解雇された後も外で働いている。
 朝から夕方までは路地裏の刺繍工房に勤め、夜は幼い子供たちの世話に忙殺されていた。

 そんなカナンの元に、神官のアスランが訪ねてきたのは、昨日のことだった。
 なんでも、聖女様がお忍びで街に出て、民の為に祈祷を行うという話だった。
 その場所のひとつが、カナンの養護院であると告げられた。

 街の人間に身をやつした近衛騎士達が、表門の内側や裏門付近に控えている。
 お忍びとは云え、尊い身に何事かが起こっては大変である。
 その為、護衛が何人も出入りをしているのだ。
 昨日から今日までの短い期間で、あっというまに聖女を受け入れる準備が整えられ、カナンはこうして久しぶりに聖女の側仕えとして、その手を引いていた。いや、反対に強引に引かれている。

「ふーっ、めちゃくちゃ走ったわ……。こういう『現場回り』の時は、やっぱり踵の低いパンプスじゃないとだめね」

 コップ一杯の水を一気に飲み干し、頭からフードを取り去った理央の変わらぬ逞しい姿に、カナンは泣きたくなった。
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