転生聖女の労働環境改革〜処刑まで残り180日。ブラック教会をホワイト化して生存ルートを勝ち取ります。監視役の騎士様がいつの間にか私にだけ過保護な最強の番犬に!

17 惟神の祈りの上

「聖女ってのは『教会引きこもり』が通常仕様じゃないの?」

 理央の言葉に、部屋付き侍女の最年少であるカナンが困ったように眉を下げる。

 自分はただ、上級神官からの事付けを言い伝えてきただけで、書類に記されている内容はわからない。
 文字の並びはわかるのだが、彼女の識字理解度は、この教会に来る以前に比べて少し成長した程度だ。
 自分の名前のような簡単で短いものなら読めるが、だらだらと続く文章は、どうしても脳が理解することを拒み、ただのレース模様や刺繍の意匠にしか見えなかった。

「わか、わかりません」

 以前の聖女は、こんなに饒舌ではなかった。
 むしろ、自分と同じ程度しか言葉を発さず、無言の時間が続くのが心地よかった。
 この数ヶ月で、カナンの知る聖女はまるで別人になっている。
 それでも、以前の無口な聖女も、今、書類を睨みつけながらぶつぶつと何かを唱えている聖女も、カナンは嫌いではない。
 どちらの聖女も、カナンを蔑んだり、意地悪な言葉を吐きつけたりしない。

「まあ、そうよね。誰もわかんないと思う。聖女ってそもそも何? 信仰の象徴として扱うのは理解できるけど、それって教会の『公式マスコット』みたいな扱いで良くない? 聖キヨイの像も飾ってるんだし。なんか不思議な力使えたんでしょ」

「はい……そ、そう、教えられて、ます」

「あ、カナンのこと責めてるんじゃないからね? へーんなのって思っただけ。私別に魔法とか奇跡の力とかもないしさ」

「――リオ様。こちらです」
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