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瑠哀 ~フランスにて~
Anastasia/著

総文字数/189,028

恋愛(その他)350ページ

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 二年前。朔也は一人の少女に出会った。忘れられないほどに印象の深い少女。  出会った時は、ただ友人として接していた。その少女を知って行くうちに、いつしか少女への思いは自分でも抑えられないほどの激しい感情に変わっていたことを知った。  知って、そして、失った。  気がついたら、いなくなっていた。何も知らないままで、何の跡も残さずにあの夏の二年前――――  偶然で出会った三人、瑠哀、朔也、ピエール。互いの素性を知らず、偶然に出会って、偶然に知り合いになった。感情もなく、冷たく他人を侮蔑するだけのようなピエールの悪癖に畏怖を見せるよりも、瑠哀はそのピエールに興味をもちだしていた。 今までの女達とは全く態度も様子も違う瑠哀に――ピエールも、知らず瑠哀に心を許すようになっていく。 そんな三人の偶然の出会いには、不穏な影がついてまわっていた。とある富豪の跡取り問題で、命を狙われている親子。脅しや嫌がらせで済むような問題だけではなく、巧妙に、裏で操作された悪質なものへと姿を変えて行く。その渦中にいる子供。 偶然に巻き込まれてしまったはずなのに、関わる必要だってなかったのだが、瑠哀は自ら力を貸すことを決心する。怪我をし、自らを犠牲にすることを厭わず、救けを求めているであろうその子供の聞こえない叫びを、その苦しみを、瑠哀だけが感じ取っていた。だから、瑠哀は決して引きはしないのだった。  そんな瑠哀の知らなかった深い優しさと、暖かい思いやりを感じ、朔也とピエールはその瑠哀に急速に魅かれ初めていた。惹き寄せられて行く。  子供の命と引き換えに連れ去られた瑠哀を間一髪で救った朔也の前で、やっと事件の終わりが告げようとしていたはずなのに―――  許される期間が、過ぎてしまったということを知らず…。別れを告げる暇もなくフランスを去って行った瑠哀――  何も知らずに知り合って、何も聞かないまま、あれほどまでに魅かれてしまった少女は、もう二度と、自分の腕の中に戻らないことを、朔也は知ることになる―――
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