雑貨商へ奉公に出る主人公と同じ身の上の下女、ヒロインは、パワハラに遭いながらも助け合いつつたくましく生きる。しかし主人からレイプされるヒロインを主人公が蹴とばしたことで雑貨商を追い出されて、二人は、親切な味噌製造所に雇われ、やがて主人公は、大学の医学部に合格して医者となる。ヒロインも通信制の高校を卒業して看護師となり、二人は夫婦になる。出雲の山奥の無医村へ招かれ医者として、看護師として村人たちに尽くす。ある日、増水した川に転落した少女を救うためにヒロインは、川に飛び込み少女を救うが、本人は流れに流されて死んでしまう。主人公は、悲しみに耐えてヒロインの生まれ故郷へ遺骨と共に帰り、その血で暮らし始める。 　遅い春の日に地主でもあり家主の末娘が、池に落ちて助け上げられるが、意識がなく救急車の到着まで主人公が、人工呼吸を施しているうちに、ヒロインである妻の幻を見て、そのまま息を引き取る。人間愛をテーマにした物語である。