社長はお隣の幼馴染を溺愛している《宮ノ入シリーズ④》
理由
『立ち入り禁止』
アパートのドアに、大きく張り出した紙を見たはずだ。
なのに、それを無視して部屋へ侵入する悪い男がいる。
「要人! 張り紙を見たでしょ?」
「これか?」
「はがさないでよ。その立ち入り禁止は、要人に向けて書いたものよ。鍵だって、ちゃんとかけて……」
「鍵?」
要人は私の両親が渡した合鍵を見せる。
――ぐっ! 一番危険な人間に鍵を渡してるのよ! 私の両親はっ!
がっくりと畳の上に膝をついた。
ここで、諦めたら、要人のペースになってしまう。
すでに要人が部屋に入ってきた時から、向こうのペースになっているけど、負けるわけにはいかない。
「会社で、よくもあんな嫌がらせをしてくれたわね!?」
「嫌がらせ? キス?」
「ちがっ……それも違わないけど……」
「ああ、香水の名前がわからなかったからか? テールドゥエルメスだ。志茉が好きそうな香りだと思って使った。気に入ったなら、志茉も使うか?」
「使いたいから、名前を知りたいとかじゃないのっ」
そうじゃない。そうじゃないのに、要人はわかってるくせに、うまくはぐらかす。
アパートのドアに、大きく張り出した紙を見たはずだ。
なのに、それを無視して部屋へ侵入する悪い男がいる。
「要人! 張り紙を見たでしょ?」
「これか?」
「はがさないでよ。その立ち入り禁止は、要人に向けて書いたものよ。鍵だって、ちゃんとかけて……」
「鍵?」
要人は私の両親が渡した合鍵を見せる。
――ぐっ! 一番危険な人間に鍵を渡してるのよ! 私の両親はっ!
がっくりと畳の上に膝をついた。
ここで、諦めたら、要人のペースになってしまう。
すでに要人が部屋に入ってきた時から、向こうのペースになっているけど、負けるわけにはいかない。
「会社で、よくもあんな嫌がらせをしてくれたわね!?」
「嫌がらせ? キス?」
「ちがっ……それも違わないけど……」
「ああ、香水の名前がわからなかったからか? テールドゥエルメスだ。志茉が好きそうな香りだと思って使った。気に入ったなら、志茉も使うか?」
「使いたいから、名前を知りたいとかじゃないのっ」
そうじゃない。そうじゃないのに、要人はわかってるくせに、うまくはぐらかす。