エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない
遠いところにいたパパは
「ねぇ、ママ」

 畳に敷いた布団の上、夏なので薄掛けを背中にかけられてうつぶせになっている和が、小さな声で聞いてきた。

 なにを言いたいかなんてわかっていた。

 でもそれを遮る資格は梓にはない。

 寝かしつけのために読んであげていた絵本のページから、和に視線を移して聞いた。

「なぁに?」

 予想通りのことを和は言った。

「パパ……、遠くに住んでるんじゃなかったの?」

 梓は黙ってしまう。

 それは梓が和にしていた『言い訳』であった。

 説明と言ってもいいだろう。

 だがやはりそれは『言い訳』なのだった。

『パパは遠い遠いところに住んでるんだよ。だから簡単に会えないの』

 そんなふうに話していた。
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