【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部更新中】
⦅第三部⦆第七章
だるまさんがころんだ
プロムでヴィルとの恥ずかしい姿を晒してから一カ月が経った頃、季節は秋真っ盛りで冬の匂いもしてくるくらいに寒さが増していた。
日本で言えば10月くらいになるのかしら……小説の世界のままだとそろそろ聖女が出現し、ヴィルと聖女が良い仲になり、私の誕生日を迎える頃にはすっかり私とヴィルの関係も冷え切っていくのよね。
悪事を繰り返した私はそのまま処刑されるというルートなのだけれど、皆で様々な事を乗り越えたおかげで、処刑ルートはすっかり回避されたのだった。
…………って私が勝手に思っているのだけど、回避されたのよね?
ここからは小説に書かれていないから確かめようもないし、とにかく小説の通りには進まなかったわけだからと思い直し、ソフィア達と穏やかな日常を過ごしながら、相も変わらず聖ジェノヴァ教会跡地に通う日々を送っていた。
まだまだここではやらなくてはならない事が山積みで、人手も足りているとは言えない。
王都の外れの貧民街で物乞いをしていた子供たちは最初、この跡地に身を寄せていたので、修道院の方々や私もだけれど皆でお世話をしていたのだ。
しかし、子供の頃から生活習慣などを整えた方がいいという事で、子供たちを修道院の方で保護してもらい、少しづつ修道院での暮らしを教えていきながら、午後からは聖ジェノヴァ教会跡地で学びや遊びの時間をもうけるようにするのはどうかと提案したのだった。
小さな子供も沢山いるので、幼少期から厳しく時間を管理したり、清貧を主とする修道院での暮らしを強いる必要はないと思う。
今までもとても辛い暮らしをしてきたのだもの、のびのびと生活させてあげたい。
かと言って規律を守れない人間になれば人は堕落していってしまうから、その辺のバランスはとても大事よね。
その教会跡地はと言うと、仰々しい飾りや煌びやか装飾などは一切なくなり、子供たちが教育を受けられるように中はすっかり改装されてきている。
大きい机が運び込まれたり、沢山の椅子が並べられたりして、まさに学校の教室ような中身になってきていた。
というのも私とマリアが日本という国で生きた記憶を持っている事から、2人で様々な案を提案し、聖ジェノヴァ教会跡地を教育機関として機能させようと考えたのだ。
もちろん私が転生者という事はマリア以外知らないので、マリアの意見に賛同したという事にしている。
今日も子供たちは午後から学びの時間を持ち、修道士たちのお話に耳を傾けている。
そんな姿を後ろからこっそりと見守っていた私の隣りに、そっと修道院長様がやってきて小声で挨拶をしてくださった。